研究課題/領域番号 |
23K03540
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
福山 繭子 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (40630687)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 柘榴石 / U-Pb / 年代測定 / 標準物質 / マイクロXRF / LA-ICP-MS / 局所分析 |
研究実績の概要 |
岩石の形成年代は、地殻の進化とその動的過程を解明する為に欠かすことができない情報である。よく用いられる岩石の年代測定法として、ジルコンのウラン-鉛(U-Pb)年代測定法がある。しかしながら、過去10年、局所分析が可能なレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)を用い、従来は年代測定には不向きとされていた方解石や柘榴石といったジルコン以外の鉱物への年代測定が試みられるようになった。これらの鉱物の年代測定はジルコンを産しない岩石の年代測定法として、極めて有効である。しかしながら、ジルコンと比べると、これらの鉱物は、同じ鉱物標準物質が限られており、また高い初生鉛含有量による測定上の制約や二次的な影響による同位体組成の改変のために、年代測定を実施しても形成年代を得られないことがある。 本研究では、スカルンやエクロジャイトといった岩石の形成年代を直接決定できる手法として、柘榴石のU-Pb年代測定法に着目した。柘榴石U-Pb年代測定用一次標準物質の作成と柘榴石の元素分布指標構築を実施することで、高精度柘榴石U-Pb年代測定法を実現することを目的としている。 本年度は、国内外でスカルン柘榴石、含柘榴石花崗岩の採取を実施した。加えて、宝石グレードの柘榴石を入手し、標準物質候補として、産状、端成分の異なる8試料の柘榴石のU-Pb年代測定を行なった。。また、マイクロXRFとLA-ICP-MSを用いて、これら柘榴石中の主・微量元素の相関を検討し、柘榴石中のチタン濃度がウラン濃度と明瞭な相関を示すことが明らかとなった。このことは、柘榴石のU-Pb年代測定において、事前にEPMAやマイクロXRFでチタンを含む主成分元素マップを作成することで、効率的なU-Pb年代測定を可能とすることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、いくつかの標準物質候補である複数の柘榴石のU-Pb年代測定を実施し、ウラン濃度、初生鉛の量といった条件を検討した。その結果、ウラン濃度と相関のあるトレーサーとなり得る主成分元素がチタンであることが特定できている。また、年代測定を実施した柘榴石は海外の試料が多く、そのうち1試料は国際共同研究者から提供を受けたものである。この柘榴石の年代測定結果については、国際共同研究者が論文を投稿している。このような理由から、本研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、柘榴石試料を追加し、U-Pb年代測定を実施し、本年度に得られた結果について検証をする。本年度に実施した年代測定の結果、初生鉛とそのバリエーションによって、年代値が得られる場合と得られない場合がある。今後、初生鉛とその他の元素との相関についても検討し、年代測定に適した試料選定の手がかりを探索する。 本年度に実施した柘榴石のU-Pb年代測定の結果、1試料については、二次標準物質として適当な結果が得られている。そのため、この試料については海外共同研究者の協力の下、ラウンドロビンを実施し、標準物質としての適正を検証する。また、本年度は、柘榴石のみに焦点をあてて元素の相関について検討をしたが、今後、柘榴石を含む岩石の鉱物組合せとその元素分布を把握し、柘榴石中のウラン濃度を律速する鉱物を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
クリーンルーム及びICP-MS実験室の空調・機器の故障・修理が必要となり、予定していた分析が遅れた結果、分析に使用予定の高純度ガス類の納品が次年度となり、次年度使用額が生じた。次年度に当初の計画通りに使用する予定である。
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