研究課題/領域番号 |
23K03606
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
伊東 聡 富山県立大学, 工学部, 准教授 (00624818)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 斜入射干渉計 / きさげ / 三次元計測 / 光応用計測 |
研究実績の概要 |
本研究では,きさげ面に形成された深さ数マイクロメートルの加工痕や粗面の表面微細形状を光波長に基づいて精密に三次元計測することを目的とし,近赤外レーザ光源を用いたアブラムソン型斜入射干渉計の開発ときさげ面の表面微細形状計測に取り組んだ.きさげ面は手仕上げによって形成され,工作機械などの摺動部の平面度を向上させ,潤滑特性や動作精度を向上させると言われている.しかしながら,加工現場におけるきさげ加工面の仕上りは定性的な方法で評価されており,形状や表面性状に基づいた定量的な評価はあまり行われていない.研究代表者らによる先行研究では,粗面形状測定における斜入射干渉計の有用性が明らかになってきたが,斜入射干渉計では測定光の入射方向に依存する測定結果の不一致や不可測部分の存在が課題であった. 当該年度は,測定光の入射方向による測定結果の不一致や再現性の低下、不可測領域の解消を目的とし,斜入射干渉計における測定光の入射角減少に取り組んだ.測定光の入射角の減少は急峻な起伏がある粗面表面上では干渉縞の過密が生じ,干渉縞の位相シフト法に基づく表面形状測定が困難となる.そこで本研究では,斜入射干渉計における光源波長を近赤外レーザに長波長化し,測定光の入射角を減少させることにより,測定光の入射角減少と干渉縞の過密防止の両立を試みた.本研究では,近赤外光源の採用により被測定面に対する測定光入射角を先行研究と比較して10°程度減少しつつ,光源の長波長化によって干渉縞の過密を防止することが可能であることが実験によって検証された.その結果,測定光入射方向による測定結果の不一致はサブマイクロメートルオーダまで減少可能であることが確認され,本手法の有効性が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は当初計画に基づいて,近赤外レーザを光源に用いた斜入射干渉計を構築し,入射角減少の試みに取り組んだ.先行研究では可視光レーザを光源に使用した斜入射干渉計によりきさげ加工面の形状計測を行ってきたが,測定光の入射方向が異なると測定結果に不一致が確認された.当該年度の取り組みでは,光源波長を200 nm程度長波長化した近赤外レーザを光源に用いた斜入射干渉計を構築した.測定光の入射角を10°程度減少させても干渉縞間隔は先行研究と同程度であり,粗面表面の急峻な凹凸形状上において干渉縞の過密が生じることなく形状測定を達成可能であることが確認された.さらに,測定光の入射角の減少により,測定光入射方向に依存した測定結果の不一致の解消される成果が確認された.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は,近赤外光源の採用により当初計画通りに測定光の入射角の減少と不可測領域の解消を達成することができた.一方,干渉縞の位相シフトについては先行研究と同様に,参照面-被測定面間の距離を精密に変位させる必要があり,大型きさげ面の広範囲測定の実施には課題がある.今後は干渉縞位相シフト機能を有する小型斜入射干渉計の設計と試作に取り組み,広範囲のきさげ面形状に対応する自動測定システムの構築に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
半導体不足の影響により当該年度内に納品されなかった物品(制御装置)が生じたため.該当物品については次年度に納品される見込みである.
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