研究課題/領域番号 |
23K03699
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中別府 修 明治大学, 理工学部, 専任教授 (50227873)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 火炎壁面相互作用 / イオン電流 / 熱流束 / MEMS / 計測 |
研究実績の概要 |
火炎壁面相互作用に関して,火炎の壁面への接近挙動を櫛歯電極型イオン電流センサで計測可能とするため,2023年度には,櫛歯電極型イオン電流センサとハイスピードカメラを用いて,①イオン電流から壁面近傍火炎の接近挙動を算出する手法と②イオン電流を一定に制御するイオン捕集電圧のフィードバック制御を用いた火炎のトラッキング計測手法の開発を実施した。 ①では,イオン電流センサに予混合層流燃焼火炎がクエンチする際の火炎壁面間の距離をハイスピードカメラで計測し,同時に計測したイオン電流トレンドを自然対数型の換算式で距離に換算することで,自発光する反応帯の伝搬挙動をイオン電流から再現できること。火炎が消光した後もイオン帯が壁面へ接近する様子が得られた。換算式には未定係数が2つ含まれており,櫛歯電極のピッチ,捕集電圧,フレームパワー等との関連を研究する必要がある。 ②では,イオン電流を100nAレベルで一定に保持するようにイオン捕集電圧をフィードバック制御するアナログ回路をオペアンプで製作し,火炎の接近に伴い捕集電圧が低下するトラッキング計測が実施できることを確認した。イオン捕集電圧は,センサ面の表面電流等の影響を補正し,自然対数型の換算式を用いることで,火炎・壁面距離へ換算できることを確認した。トラッキング計測では,設定電流が供給できるだけのイオン濃度を持つ反応帯前面の位置に応じて電圧が変わっており,火炎の特性に影響されにくい火炎距離の計測が期待される。櫛歯電極ピッチ800~2000µmのセンサを用いて1000µmから200µmの範囲で火炎の接近挙動が計測できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
櫛歯電極型イオン電流センサでは,双極性電界がセンサ近傍に形成され,火炎の接近に対して,検出距離以内でイオン電流が検出される。イオン捕集電圧を一定とした計測では,火炎が櫛歯電極ピッチ程度より近い距離でイオン電流が火炎の接近と共に増加し,消炎によりイオン電流が低下する挙動が観察されている。カメラによる火炎位置の計測と併用することで,イオン電流トレンドを簡単な換算式で火炎の距離に変換できることは,新たな発見であり,燃焼を伴うエネルギー機器の冷却損失の機構解明に貢献できる成果である。 また,トラッキング計測では,フィードバック回路を用いる複雑さはあるが,イオン濃度が一定以上ある火炎の反応帯の接近挙動を捕集電圧から算出でき,1点較正すればイオン電流センサで火炎の接近を捉えられる利点がある。 初年度に以上の2点が確認できたことは,おおむね順調に研究が遂行できていることの理由である。
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今後の研究の推進方策 |
捕集電圧を一定とする受動的な手法およびフィードバックを用いた能動的な手法でイオン電流センサにより壁面近傍の火炎の接近挙動を捉える手法の確認が実施できた。今後は,MEMS技術により熱流束センサとイオン電流センサを隣接させた複合センサを製作し,火炎のクエンチにおいて熱流束と火炎の接近挙動を同時計測することで,壁面熱伝達特性と燃焼状態の関係に迫る。また,乱流状態での火炎壁面相互作用についても,簡易燃焼容器内での実験を準備し,実験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度には,イオン電流センサによる火炎位置計測の基礎特性の研究に集中したため,予定していた燃焼容器の製作には着手できず,次年度使用額が生じた。次年度に,燃焼容器の製作を行い,予定の予算を使用する計画である。その他の経費の使用はおおむね予定通りである。
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