研究課題/領域番号 |
23K03711
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
鳥山 孝司 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50313789)
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研究分担者 |
多田 茂 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 教授 (70251650)
舩谷 俊平 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50607588)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 温度計測 / 温度分解能 / 不確かさ解析 / 汎用デジタルカメラ / 青色LED光源 / 感温液晶 |
研究実績の概要 |
当該年度では、青色LEDを照射光源とした際の感温液晶からの散乱光を汎用のデジタルカメラにて撮影してそのRGB値と温度との関係を詳細に調べた。評価を行った温度範囲は10℃~60℃であり、使用した感温液晶は呈色温度範囲が10℃~20℃のコレステリック系のものである。その結果、汎用デジタルカメラにおいてもカメラの感度特性からRGB値それぞれ温度に特有な値が検出され、相対輝度値及びHSV変換した際のHS値の両方で10℃~60℃の温度範囲で温度検定ができることが明らかとなった。しかしながら、使用した青色LED光源の波長(420nm)の場合、呈色温度範囲の上限の温度のおよそ20℃高い温度で散乱光強度の値が最大値を取るという特性があり、その温度付近の温度分解能が著しく悪化するということが確認された。なお、計測可能温度範囲及び計測の不確かさには相対輝度とHS値による温度検定で大きな差は確認されなかった。したがって、十分な温度分解能を得られる温度範囲としては、10℃~40℃の範囲に限定されるということが明らかとなった。 分光器による散乱光強度の評価の結果、照明光源の波長が長くなると、散乱光強度の値が最大値を取る温度が低温側に移動するとともに、単位温度当たりの散乱光強度の変化量も大きくなることが確認された。したがって、照明光源の波長をやや長くすることでより高い温度分解能を実現するとともに、420nmの光源では計測の難しい温度域の計測の可能性を見出した。検討の結果、440nm程度の照明光源を使用するのが適切ではと考えられ、これからの課題となっている。 本手法を温度分布計測に拡張し、温度分布のある対象物の温度測定も可能となっている
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、青色LED光源を照射した際の感温液晶シートからの散乱光強度を汎用デジタルカメラで撮影し、得られたRGB値と温度との関係を整理するとともに、より温度計測に適した光源の波長域を明らかにすることを目的としていた。実際には、420nmの波長のみでの評価のみであったが、広い温度範囲で計測できることや、温度分解能や不確かさ解析の評価も実施しており、特に温度分解能が悪くなる温度域と波長の特性の関係を明らかにできている。その結果、もう少し波長の長い光源を用いれば、計測可能温度範囲や温度分解能、不確かさなどが改善できる可能性も見出している。 さらには、温度分布を伴う温度計測にも取り組めているため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で得られた結果から、440nm付近のLED光源を用いると計測可能温度範囲などが大幅に改善する可能性が見いだせているため、まずはその評価を感温液晶シートを用いた実験にて進めていくことを予定している。その光源での計測能力を十分評価したうえで、もともとの予定であった液体内温度分布の計測に繋げていくことになる。 感温液晶微粒子を用いた研究では、散乱光強度をある程度揃えるため、その微粒子のサイズも揃える必要がある。そのため、いくつかの目のサイズの篩を選定し、どの粒子径を用いるのが温度計測に対して適切であるかの評価を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
汎用デジタルカメラの選定や納入に時間がかかり、実際の実験の開始が遅れたことにより、当該年度では学会で発表ができたかったというのが理由である。それにより人件費もかけられなかったため、次年度使用額が生じてしまっている。 なお、今後の実験に必要な実験装置の改修も完了しており、次年度に初年度に出来なかった実験を実施する予定であり、人件費を用いて実験人員を増強するとともに、学会発表も行っていく予定である。
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