研究課題/領域番号 |
23K03734
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
日比野 良一 愛知工業大学, 工学部, 教授 (20394728)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ドローン / CO2削減 / 風 / 経路 / 対気速度 |
研究実績の概要 |
本研究は、物流ドローンを対象に運用時におけるCO2削減を狙いとする。今後物流でのドローンの活用が増加するのに伴い、ドローンのCO2排出の割合も増加すると考えられる。運用で影響が大きい要素としては風(風向・風速)が挙げられる。風に対するドローンの対気速度や飛行経路の選び方で電費が大きく変わるからである。電費とは距離あたりに消費するエネルギーで、火力発電が7割以上の日本では距離あたりのCO2排出量を意味する。 そこで本研究では、課題①ドローンのセンサ情報から風向・風速と対気速度を推定する技術の構築、課題②風向・風速の学習モデルの構築と電費を最小化する飛行経路の決定の二点により、運用面からCO2の削減を目指す。本年度(計画一年目)の実績は以下のとおりである。 課題①は、机上にて拡張カルマンフィルタ(EKF)を適用して風向・風速と対気速度を推定するロジックを構築した。今年度から当大学に設置した気象センサのデータを調べたところ、風は確率的に正規分布で近似表現でき自己相関も小さいことがわかったので、上記のEKFが適切と判断した。また風がある条件でのドローンの飛行を再現可能なシミュレータを構築し、シミュレータ上にて作成したロジックが問題なく推定できることを確認した。今後実機にて検証を行う。 課題②は、愛知県およびその近傍を飛行エリアとみなし、気象庁のアメダスおよび上記気象センサのデータ(期間:24.1~24.3)を使って各観測点間の風向・風速の相関関係を調べた。その結果、地理的に近い観測点ほど相関(相関係数)が高い傾向にあること、山に近い観測点ではそれ以外の観測点と相関が小さいことがわかった。この結果に基づき相関が近い観測点ごとに分類し、分類した地点を含むエリアごとに風(風向・風速)のモデル化を行った。これは観測点データの変動や誤差を考慮した確率的なモデルである。今後このモデルの検証を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年計画でその初年度である。研究計画の研究はほぼ予定どおり達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の検討の結果、当初の計画から以下を変更した。 ・本研究では空気抵抗のモデルが必要なため、ドローンを風洞に入れて抵抗係数を計測する予定であった。しかし実験は行ったものの技術的な問題により必要なデータをとることができなかった。このため、飛行しながらオンボードで抵抗係数を推定する手法を検討することに変更した。この手法は、令和6年度に具体的に構築する予定である。 ・当初予定していた気象センサ(購入済み)では、モデル化に十分なデータが得られないことがわかったため、別のセンサを検討中である。 令和6年度は、当初の計画にそって進めていく。課題①は、得られたアルゴリズムを実験用ドローンに実装し、飛行を行い対気速度の推定を行う。実験用ドローンにはポールとその先端に気象センサを搭載するなどロータの影響が小さい場所へ設置し、推定した対気速度との比較により精度を検証する。一方風向・風速は、上記の対気速度とドローンに搭載されるGPSからの対地速度の情報を使って推定をする。この検証は、ドローンを飛ばす経路の近傍にある高い建物に気象センサを取り付けて比較を行う。 課題②は、令和5年度に作成した愛知県およびその近傍の学習モデルを対象にその精度を検証する。すなわち、地域の分類方法やそこで抽出された地域特有の特徴量が妥当かを検証し、必要に応じて改良する。風の特徴が異なる別の地域においても、同様に学習モデルを作成し、その精度を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(B-A)が0より大きい主な要因は、当初複数個の購入を予定していた気象センサを一つしか購入しなかったことである。その理由は、購入した気象センサを使用していく中で、精度の問題や、想定していた情報(誤差の統計データ)が得られないことで、我々の要求する計測データには不十分なことが判明したためである。このため、今年度発売予定のセンサを含めて、別のセンサの購入を検討している状況である。 次年度は、別の気象センサを購入して、当初の計測を行う予定である。
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