研究課題/領域番号 |
23K03748
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
田中 昂 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (60759273)
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研究分担者 |
大浦 靖典 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (60512770)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 自励駆動 / 2次遅れ系 / 制御 / ネットワーク構造 / 構造ヘルスモニタリング |
研究実績の概要 |
本研究では,近接した固有振動数を有する複数の固有振動の分別計測のための2次遅れコントローラを用いた自励駆動法の開発および多点加振技術への拡張と,構造物上のセンサ群の情報から構造物のネットワーク構造表現およびそのパラメータ同定技術の開発を通じて,大型構造物のアクティブ構造ヘルスモニタリング技術を確立することを目指している. 2023年度は,近接した固有振動数を有する固有振動計測のための2次遅れコントローラを用いた自励駆動法の開発を行った.2つの1自由度振動系間で相互作用がある2自由度振動系において発生する自励振動現象(切削加工におけるびびり振動やディスクブレーキの鳴き)において,1自由度振動系の固有振動数が近接していることが自励振動が発生する条件となることがある.そこで,振動特性が未知の構造物において近接する固有振動数を有する固有振動が存在するときに,1自由度振動系の振動特性である2次遅れ系を示す制御コントローラによる制御を行い,構造物の固有振動数で自励発振を発生させることを目指した.この制御コントローラでは位相が90°遅れになる周波数が1点しか存在しないため,固有振動数と制御系コントローラが連成して自励発振する周波数は1点しか発生しない. まず,1自由度振動系に2次遅れコントローラを用いたフィードバック制御を行ったときの制御理論を構築し,加振周波数と2次遅れコントローラの関係が自励発振に与える影響を明らかにした.次に,数値シミュレーションにより,自励発振が発生したときの時刻歴波形から固有振動数を同定する手法を開発した.最後に,1自由度振動系を用いた実験により,提案した同定手法の妥当性検証を行い,十分な精度で固有振動数を計測できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた1自由度振動系における基礎検討が計画通りに終了したため,おおむね順調に進展していると判断した.制御理論の構築,数値シミュレーションによる固有振動数同定法の提案,1自由度振動系を用いた実験による提案手法の妥当性検証を行い,いずれも目的を達成している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,今年度提案した自励駆動法を多点加振に拡張したときの制御理論の構築,固有振動数同定法の多自由度振動系を用いた検証,構造物をネットワークとしてとらえたときのネットワーク構造およびそのパラメータ同定法の基礎の確立を予定している. 今年度提案した自励駆動法を多点加振に拡張したときの制御理論の構築については,モード座標を用いて1自由度モード近似に基づき,制御理論の拡張を目指す予定である.固有振動数同定法の多自由度振動系を用いた検証については,1点加振時の性能限界を明確にし,多点加振の必要性を示すとともに,多点加振時に起こる加振機間の同期性能に関する考察を行う予定である. 構造物をネットワークとしてとらえたときのネットワーク構造およびそのパラメータ同定法の基礎の確立については,構造物に取り付けたアクチュエータとセンサにより制御を行ったときに計測される振動特性の変化から,構造物ネットワークの自由度より少ないセンサ数でネットワーク構造やそのパラメータを同定することが可能かを検証する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究において,使用予定だった設備備品費については,予定していたよりも安価の新製品が発売されたため次年度使用額が発生した.実験装置製作費・計測システム構築費についても,外注予定だった加工を学内の設備で行うことができたため,次年度使用額が発生した. 次年度使用額については,2024年度に計画している実験計画を見直し,より実環境に近い実験装置での検証のための実験装置製作費・計測システム構築費に充当する予定である.
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