研究課題/領域番号 |
23K03757
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中山 昇 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (80336445)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 導電性 / カーボンナノチューブ / 粉末成形 / 複合材料 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、複合材料中に意図的に設けたパーコレーション構造によってもたらされる電気特性の劇的な変化の発現条件を解明することにある。 VGCFの添加量を変化させ、PC粉末の表面にVGCFがコーティングされた混合粉末を設計する。その後、混合粉末に対して、成形温度を変化させて板状に成形したPC/VGCFを用いて電気特性や内部構造を評価した。 VGCFの添加量を2.0 vol.%一定としてボールミリングを用いてPC粉末の表面に付着させた。混合したPC/VGCF粉末を金型に充填しホットプレスを用いて、板状に成形した。成形応力を10MPa、保持時間を60min一定とし、成形温度を200~280℃と変化させPC/VGCFの成形体を作製した。成形体寸法は100×100×3mmである。ダイシングソーを用いて10×10×3mmに個片化した試験片を用いて評価した。 PC/VGCFを2枚の電極基板に挟み込み、安定化電源を用いて一定の電圧を印加した状態で、垂直荷重を0~500Nと連続的に負荷したときのPC/VGCFの電圧を連続的に計測した。測定した電圧からPC/VGCFの電気抵抗を求めた。 その結果、成形温度を変化させて、コーティングの状態を保ちつつ成形される温度条件を明らかにすることができた。さらに、PC/VGCFの成形温度が低下すると、局所的なVGCF含有率が増加しPC/VGCFの電気抵抗が低下することがわかった。均一にVGCFが分散したPC/12.5vol%VGCFよりも少ないVGCF添加量(2.0 vol.%)でも荷重に伴い抵抗値が変化することがわかった。成形温度を低下させると、局所的なVGCF含有率が増加し、抵抗の変化が増加した。以上より、VGCFの添加量が一定であっても成形温度によりPC/VGCFの局所的なVGCF含有率が変化し、PC/VGCFの電気的特性が変化することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の計画通り、成形温度を変化させて、コーティングの状態を保ちつつ成形される温度条件を明らかにすることができた。さらに、電気抵抗を測定し、成形温度と抵抗の関係を明らかにすることができた。また、電子顕微鏡などを用いて、PC/VGCFの内部組織を確認することができた。 したがって、申請書の計画通り、研究が遂行されていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の結果を用いて成形温度を変化させて、コーティング状態を保ちつつ成形される温度を用いて、VGCFの添加量における、混合粉末製造の回転数や回転時間の条件を確立する。 また、曲げ試験などを行い機械的性質を明らかにすることで、VGCFの分散状態を明らかにする。
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