研究課題
我々は2012年より、CTガイド下に針を穿刺する遠隔操作型ロボットZerobotを開発し、医師主導治験を実施した。Zerobot は遠隔操作型穿刺ロボットとして有効であることが2018年実施のFIHによって確認できた。この穿刺ロボットの自動化が現在の課題である。穿刺ロボットの自動化で最も重要な技術として目的腫瘍への自動穿刺がある。生検導入針用ガイドニードルは直径1.1ミリの中空芯であり、患者の体組織は均一でないため穿刺中に針は容易にたわみ、針先が目的腫瘍から離れた軌道をとってしまうことが問題である。そのために、用手の穿刺であっても一定深さ挿入後にCT透視によって針先位置を確認する必要がある。我々はその問題を解決するために、力センサによって検出した針のたわみを逐次的に除去する動作生成手法を提案し、針先を目的腫瘍に到達させるアルゴリズムの有効性をファントム実験よって確認した。本研究はこの手法を拡張し、腫瘍への針先到達精度の向上および患者の呼吸性体動への対応をめざすものである。自動穿刺ロボットの性能向上に向けた確認事項は次の2つである。(1) ロボットが取得できる手先の軌道と力覚センサの時系列情報を統合して、現在の針の形状を正確に得るにはどのような形状予測モデルが必要か。(2) 患者の呼吸性体動によって変化する針の形状にも対応して安全に自動穿刺継続するアルゴリズムが構築可能か。深層学習と画像処理を用いて、ロボットが保持している針の形状をボリュームCT画像から推定する手法を提案し、IEEE SMC 2023において発表した。また、医療用ロボット自動穿刺に必要なロボットアーム部の患者や周辺機器との接触可能性を事前に判定する手法を提案し、第32回コンピュータ外科学会大会にて発表した。
2: おおむね順調に進展している
研究はおおむね順調に進展している。ロボットによって真っすぐに針を穿刺する場合、針の穿刺軸と体表の穿刺点が一致していない状態で穿刺を進めるとたわみが拡大していく。そこで標的を中心としてリモートセンターのように回り込み動作をすることで針の根本位置、体表の穿刺点、標的腫瘍中心の3つが同一直線上に並ぶようにロボットが動作することでたわみを抑制する。穿刺を進めていくと拡大するたわみを逐次抑制することでたわみを抑えながら標的腫瘍に針先が到達することを実現した。これらの内容をまとめて投稿予定である。
令和6年度には体動を再現するファントムを製作し、令和7年度に体動に対応したアルゴリズムの構築と検証実験を実施する。精度検証には針先位置のCT画像による計測が必要なため、IVR-CT装置下で実験する予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Proceedings of 2023 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics
巻: 1 ページ: 4947,4952
10.1109/SMC53992.2023.10394655