研究課題/領域番号 |
23K03760
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
高嶋 一登 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (30435656)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ロボティクス / 可変剛性 / 形状記憶ポリマー / ジャミング転移 / 形状記憶合金 / ソフトメカニクス / 力覚センサ / ロボットアーム |
研究実績の概要 |
本研究では、形状記憶ポリマー(SMP)、ジャミング転移現象、形状記憶合金(SMA)などを利用したロボットアームの剛性と感度を①どのようにして正確に切り替えるか?②どのタイミングで切り替えるか?について検証する。さらに、その検証結果を基に、各要素技術のブラッシュアップを進める。3年計画の1年目である2023年度には、以下の項目に着手した。 【実施項目1-1:切り替えの正確性の向上】これまで開発してきた個別の要素技術の改良により、剛性と感度の切り替えの正確性の向上を図った。例えば、電熱線を埋め込んだSMPシートを用いた人工筋肉では、電熱線に使用していたニクロム線をSMA線に変更し、シートの作製再現性、形状回復性の向上を確認した。 また、SMP板にひずみゲージを貼り付け、片持ち梁状に固定した力覚センサを作製し、SMPの断面形状を変更し、先端に加えた力と検出されるひずみの関係を変更することができた。一方、手動で折り曲げてSMPシートに埋め込んでいたニクロム線を、コンピュータ数値制御(CNC)加工した金属箔に変更し、作製再現性を向上させた。3種類の構造の力覚センサを試作し、どれも温度によって測定する力のレンジを変更可能なことが分かった。 【実施項目1-2:切り替えのタイミング確定】剛性と感度の切り替えのタイミングを確定する基礎検討として、(実施項目1-1)で開発した力覚センサの対象物の圧縮剛性測定への応用を検証し、センサを用いて対象物の圧縮剛性を測定できることを確認した。 【実施項目2:項目1の成果を組み合わせたロボットアームの開発】市販のロボットアームにSMAとジャミング転移現象を用いた可変剛性リンクを取り付け、ピックアンドプレース動作を評価した。任意の形状に変形し保持可能なリンクの形状や形状固定方法の改良により、可搬重量、搬送可能回数の増加、固定した形状の耐久性の向上が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載のように、おおむね当初の計画通り【実施項目1-1:切り替えの正確性の向上】、【実施項目1-2:切り替えのタイミング確定】、【実施項目2:項目1の成果を組み合わせたロボットアームの開発】に着手できたため。ただし、実際にどのタイミングでリンクの剛性やセンサの感度を切り替えるかについて検証していないので、次年度は(実施項目1-2)についても重点的に評価していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
3年計画の2年目である2024年度には、以下の項目を実施する。 【実施項目1-1】2023年度に開発したSMA線やCNC加工した金属箔を用いたSMPシートをさらに別の実験によって評価していく。また、人工筋肉に貼り付けて繰り返し動作する中でSMPシートが裂断する場合があったので、シートの貼り付け方の改善など、耐久性向上に取り組む。さらに、SMA線を埋め込んだSMPシートについて、先行研究で実施して効果のあったSMPシートのように、シートを分割して、人工筋肉の湾曲角度、発生力の増加を図る。力覚センサでは、SMPシート作製方法、構造の変更などによって、ひずみと力の関係における理論値との差を減らしていく。その際、偏光カメラを用いてSMPシートの変形時の応力分布を測定し、センサ構造の最適化を図る。既に(実施項目2)としてロボットアームに応用している可変剛性リンクについては、その実験結果を基に、構造などを改良していく。また、触覚センサでは、形状固定方法を改良していく。 【実施項目1-2】動作の正確性向上、ロボットや周囲の損傷リスク低減の観点から、最適なタイミングを決定していく。その際、環境に応じて、能動的に変更する手法の提案も目指す。 【実施項目2】ロボットアームに取り付けてピックアンドプレース動作を評価したリンクは、さらにもう1台のロボットアームを追加し、追加したアームによって型を押し当てて形状を固定し、双腕ロボットによる工程の効率化や自動化を目指す。またグリッパとしての応用も図っていく。一方、開発した力覚センサをロボットハンドに取り付け、物体の把持力を測定する実験を行う。また、対象物の持ち上げ・維持動作などを行い、機械的特性(強度など)を検証する。 以上の結果得られたロボットアーム、および各要素技術の構造などについて、知的財産権の確保を目指す。
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備考 |
九州工業大学 新技術説明会にて「任意の形状に変形し保持可能なロボットの可変剛性リンク」を発表
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