研究実績の概要 |
方向性電磁鋼板の巻鉄心コアを用いたステータモジュール型バーニアモータの巻線方式とロータ極数のトルクへの影響を有限要素磁界解析により明らかにした。高トルクを得るためには,径方向の高調波磁束密度成分だけでなく,周方向の成分も重要であることや,検討したモデルにおいては第5次高調波を発生させるモジュール巻線構造が高トルク化に有効であることが分かった。また,コイルピッチと磁石ピッチに最適値があることが分かった。(「ステータモジュール型バーニアモータの巻線方式とロータ極数の影響」,AEM学会誌,Vol.31, No.2, pp.264-271, 2023 June)。 永久磁石を用いた磁場中熱処理技術の開発については,実績のあるアモルファスシートを用いて開磁路型磁化器を設計・試作し基礎的実験を行った。その結果,永久磁石を用いた方法でも磁気特性は改善するものの,電磁石型磁化器に比べて改善率が小さかった。理由としては永久磁石からの漏れ磁束が多く,試料に鎖交する磁束が少ないためと考えられ,対策として閉磁路型磁化器を設計することにした(「アモルファス磁性材料の永久磁石を用いた磁場中熱処理効果」,電気学会A部門大会, 2023 Sep.)。 磁気特性が組立・加工により劣化することの影響を明らかにするために,レーザーカット加工を施した電磁鋼板の鉄損分布の評価を,赤外線カメラを用いた熱的鉄損測定法により行った。本方法によれば,U字カットコアの鉄損分布を測定でき,熱処理条件の最適化の検討に有効に利用できることを明らかにした。(「熱的鉄損測定を用いたレーザーカット加工を施した電磁鋼板の鉄損分布の評価」,AEM学会誌,Vol.31, No.2, pp.305-311, 2023 June)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ギャップ磁束密度が一定の場合,トルクを大きくするためにはロータ径を大きくする必要があるが,その場合アウターロータ構造の方が有利である。しかしながらU字カットコアを利用してアウターロータ構造にすると,永久磁石の周長に比べてステータのティース幅が小さくなり,コイルピッチと磁石ピッチのバランスが悪くなる。一方インナーロータ構造のままで,ロータ径を大きくし,磁石の極数を多くすると第5次高調波を利用したステータモジュールの場合でもトルクが低下する傾向が得られた。そこで,アウターロータ構造には等方性電磁鋼板の積鉄心を用いて,第5次高調波を多く発生できるモジュール巻線構造を考案して検討することにした。 永久磁石を用いた磁場中熱処理技術の開発については,令和5年度の基礎実験において,開磁路型磁化器では不十分であり,また試料サイズが10mm×50mmでは生材の磁気特性のバラツキが大きく,定量的な検討ができなかったことから,閉磁路型磁化器を設計・製作し,かつ試料サイズを20mm×100mmに大きくすることで,生材の磁気特性のバラツキを少なくし,定量的な検討ができるように,20mm幅の簡易単板磁気試験器を製作して,Hコイル法ならびに空隙補償コイルを装着して磁気特性の測定精度を改善することにした。 組立・加工時に劣化した磁気特性を改善するためには,加工後に熱処理を行う必要があるため,リングコアで鉄心を模擬し,低周波誘導加熱を用いた熱処理法を検討している。低周波誘導加熱用ホルダーを用いて加熱レートが制御可能であることを明らかにした(「低周波誘導加熱用ホルダーによる加熱レートの検討」,日本AEM学会誌,Vol.32, No.1 pp.70-76, 2024 March)。
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