研究課題/領域番号 |
23K03823
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
柴 建次 東京理科大学, 先進工学部電子システム工学科, 准教授 (10343112)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 患者漏れ電流 / 経皮トランス / ワイヤレス電力伝送 / 経皮電力伝送 / 平衡化 / 送電コイル / 補助人工心臓 |
研究実績の概要 |
2023年度は,実測においては,体外結合型経皮トランスを従来のものから平衡化を図ったダブル経皮トランスにした場合における高周波患者漏れ電流Ipの実測をおこなった.生理食塩水を模擬人体として測定した場合において,シングルではIp = 最大3.0mAだったものが,ダブルでは最大Ip = 1.0mAに低減した.豚肉を使った実験においては,漏れ電流は75%程度に低減した.また,送電コイルのどの位置を模擬生体に接触させたときに漏れ電流が最小になるのかを測定したところ,巻線のほぼ中央部であることが確認できた.理論上は電圧の平衡化が図れると中央になるはずであり,実測結果も一致していた.ただし,上記の結果は送電コイルだけから流れる漏れ電流の測定であり,次年度は受電コイルも組み合わせた測定を行う. さらに,空芯偏平型経皮トランスを平衡化した場合における,AC-AC伝送効率の実測と放射磁界の実測を行った.試作したものは,平衡化・左右対称が正確を図ることに重点を置いて試作した.効率を重視した設計にはしていないため,伝送効率は約70%であったが,左右対称であり,電気的に平衡化が図れているものを試作した.左右対称であり,電気的に平衡化が図れると,放射磁界も打ち消され消えるので,その測定を研究室内で行った.その結果,従来のシングル経皮トランスの場合に比べ,最大18 dBマイクロA/m低減できることを確認した.今後,電波暗室での正確な測定と,高周波患者漏れ電流の測定も行う予定である. また,解析においては,空芯偏平型経皮トランスを平衡化していない場合の高周波患者漏れ電流を,詳細人体モデルを用いて計算した.漏れ電流は9.98 mAであった.今後,平衡化した場合の解析も行っていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに,最終年度に行う予定であった詳細人体モデルを使った解析も先に行っており,できることから検討を進めている状態である.実験については,セットアップに時間と場所が必要なため,1つずつ,順番に行うことになることから,やや解析が先に進んでいる.学会発表も10回以上行うことができ,順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
はじめに,解析について,空芯偏平型経皮トランスを非平衡コイルから平衡コイルに変えた場合の高周波患者漏れ電流Ipの差を,詳細人体モデルを用いて計算する.平衡化により,Ipだけでなく放射磁界や体内電界も低減する可能性もあるため,同様に計算する.また,体外結合型経皮トランスにおいも,シングルからダブル経皮トランスに変えた場合のIpの差を,詳細人体モデルを用いて計算する. 次に,実測については,体外結合型経皮トランスをダブル経皮トランスに変えた場合,及び,空芯偏平型経皮トランスを非平衡コイルから平衡コイルに変えた場合について,送電コイルからの漏れるIpと,受電コイルから漏れるIpに分離した測定を行う.また,受電コイルは防水コーティングを,0.5mm以下に薄くした場合と,2mm程度に厚くした場合,材質を変えた場合の数種類で実測し,漏れ電流10mA以下にするために必要なコーティング方法を調べる. また,上記は,すべて経皮トランス間の解析・実測であるが.インバータ回路,補償回路,整流平滑回路を入れたシステム全体の実験装置も試作する.このため,整流平滑回路や補償回路などは平衡化を図った回路を新たに設計・試作する.回路の基板設計・試作・実装と回路周辺の防水コーティングが必要になる.試作後に,各回路から流れるIpと,放射磁界を測定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
送電コイルからの高周波患者漏れ電流測定などは予定よりも進んでいるが,補償回路,整流平滑回路などについては,コイルが決定しないと電気定数が決まらず,回路基板の設計・試作・部品実装が行えなかったため,その分の費用の差額が生じている.2024年度,この分の試作を行う予定である.
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