研究課題/領域番号 |
23K03843
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
亀山 渉 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90318858)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 映像符号化 / 動き補償 / DNN / 予測フレーム生成 |
研究実績の概要 |
非定常な映像信号にルールベースで追従する従来の映像符号化方式を超える情報圧縮性能を達成するため、符号化済みフレームを学習データとして利用するDNNによる動き補償予測方式について、3年間の研究の初年度を終了した。 研究課題1「高画質予測フレーム生成」に関して、PredNetに複数の畳み込みを導入する手法を検討した。具体的には、PredNetに3×3、5×5、7×7の畳み込みを組み合わせて評価を行ったところ、実験で使用した映像では3×3及び5×5の組み合わせで最も良い予測フレームが得られることを確認した。また、これらの複数の畳み込みをPredNetに代わる新しいアーキテクチャとして提案されているPreCNetに導入する検討を行った。GANとPredNetの併用方法については、2022年度に前倒しで既に検討を行っており("GANとPredNetを用いた映像フレーム予測精度向上に関する検討",電子情報通信学会画像工学研究会,2022年3月)、2023年度はPreCNetにこれを導入する検討を行った。画像特徴量を考慮した損失関数の導入に関しては、既提案のGDL(Image Gradient Difference Loss)を拡張し、3×3、5×5及び7×7の組み合わせでエッジ特徴を抽出したものを損失関数として利用する手法を提案した。実験の結果、既提案のVGG16を利用した特徴量を損失関数として利用する手法に比べ、より少ない計算量で良い予測性能が得られる組み合わせの存在を確認した。以上に加え、時空間情報を利用した新しいフレーム予測手法について基礎的な検討を行い、高品質な予測フレーム生成の可能性を得た。 研究課題2「汎化性能向上」については、実験環境を整備を整備した。整備した実験環境を基に、2024年度に学習モデル生成を行っていくことを予定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題1「高画質予測フレーム生成」については、一部の検討課題は2022年度に前倒して研究を行っていたが、2023年度は、それを含めて、当初の計画通りに研究を遂行した。加えて、時空間情報を利用する新しい予測フレーム生成手法にも着手した。これについては、2024年度に研究成果を査読付き国際学会で発表する予定としている。研究成果については、査読付き国際会議2件、国内学会発表1件の発表を行い、予定通りの研究成果公表を行った。一方、PredNetに代わる新しいアーキテクチャとして提案されているPreCNetにこれらの提案手法を組み込む方法については方式検討に留まっているため、引き続き2024年度の検討課題とする。 研究課題2「汎化性能向上」については、当初の予定通りに実験環境構築を行った。よって、2024年度は当初の予定通りの研究計画を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はほぼ計画通りに研究を遂行できたことから、研究期間2年目に当たる2024年も、当初の計画通りに研究を進めることとする。即ち、研究課題1「高画質予測フレーム生成」については、引き続き各種の新しい提案と改良方式の検討を進め、既存提案手法を含め、性能向上と最適化に関する検討を行うこととする。研究課題2「汎化性能向上」については、2022年度に構築した実験環境を利用し、大量のフレーム情報を利用した学習モデル生成実験を行うこととする。 また、研究課題3「統合検証」については、2025年度に予定する研究課題1及び2で検討した全ての成果を既存の映像符号化方式に組み込み、圧縮性能の観点からその有効性を確認する統合検証に向け、予定通り、計画の立案を行うと共に、統合検証に必要な環境構築を行う予定とする。具体的には、既存の映像符号化に種々の提案手法を組み込むためのシミュレーションソフトウェアの整備を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度末に行った研究発表に伴う出張、並びに、研究出張において、当初の計画と異なる状況が発生したために少額の次年度使用金が発生した。具体的には、2024年電子情報通信学会総合大会での研究発表出張について、学会期間中にどうしても出席しなければならない学内会議が開催されることとなったため、当初の予定であった5泊6日の出張期間を1泊2日に短縮したこと、また、電子情報通信学会画像工学研究会の研究出張については、学会プログラムが予定より早く公表されたことから、いわゆる早割で航空券の購入が可能となったことが理由である。 2024年度に予定する出張においても同様の不確定要素が見込まれ、必ずしも必要経費が少なくなるとは限らないことも予想されるため、次年度使用金はこれらの不確定要素をカバーするために有効に使用することを計画する。また、近年の円安等により購入予定機材等の値上がりも懸念されるため、機材等の購入にも有効活用することとする。
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