研究課題
通信の遅延は情報の歪みとみなすことができる。この着想に基づき、一般情報源に対するレート歪み問題を考察した。我々は、この問題に対して確率的歪みの概念を導入し、固定長符号化を行った場合のレート歪み関数を明らかにした。確率的歪みは、情報源の観測値に雑音が含まれる場合のレート歪み問題を解く上で導出される概念である。一方、情報スペクトルを保存する可変長符号化という考え方も提案し、レート歪み問題に適用した。この考え方では,期待値や裾確率ではなく確率分布そのものによって符号語長を評価する。これらを踏まえ、確率的歪みに対して最大歪み制約を適用し、かつ分布を制約する可変長符号化を適用したもとでレート歪み問題を解いた。具体的には,良い符号が存在するための必要十分条件と歪みレート関数を明らかにした。他方、通信の遅延は情報伝達のコストとみなすことができる。この着想に基づき、一般通信路に対するコスト付き符号化問題を考えた。基本的な問題設定では、符号器がもつすべての符号語がコスト制約を満たすことが要請される。拡張された問題設定では、送信される符号語のコストが制約を満たす確率を問題にする。これに関して、我々はコスト分布の裾確率を制約した場合の通信路容量を求めた。さらに、評価をコストの確率分布のものによるものに拡張し、一般通信路に対するコスト付き符号化問題を考えた。その結果、制約を満たす良い符号が存在するための必要十分条件と通信路容量を導出することができた。
2: おおむね順調に進展している
計画に関連した問題について、新たな数学的定理を導出することができた。
忠実度規範付き符号化問題とコスト付き符号化問題について、情報スペクトル保存の観点からさらに汎用性のある数学的定理を証明する。
当初計画で見込んだよりも安価に研究が遂行できていること、具体的には高価な高性能乱数生成器や解析用ソフトウェアを購入することなく実験およびデータの解析ができていることが挙げられる。研究成果の位置づけを正確にまとめるためにも最新の研究状況を把握するために研究会等への参加も予定している。
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IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E107-A, No.3 ページ: 404-408
10.1587/transfun.2023TAP0009
巻: E107-A, No.3 ページ: 458-463
10.1587/transfun.2023TAP0010