研究課題/領域番号 |
23K03884
|
研究機関 | 公立千歳科学技術大学 |
研究代表者 |
横井 直倫 公立千歳科学技術大学, 理工学部, 准教授 (60353223)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 計測工学 / 衛生管理 / バイオフィルム / 光散乱 / 画像処理 |
研究実績の概要 |
本研究では、水中に存在する細菌等の微生物の作用により材料表面に形成される粘着性の薄い膜であるバイオフィルムの撮像・解析用の画像計測システムを独自に構成し、バイオフィルムの形成状態をオンサイトで定量評価し、さらに必要に応じてその除去を施すことで、患者の院内感染回避と医療従事者の院内感染予防に係る負担の軽減を図れる医療機器衛生管理システムを開発することを目的としている。 令和5年度は、まず流量可変式ローラーポンプ(流量可変範囲0.8~20.0ml/min)によりバクテリア含有水を液槽から汲み上げ任意の流速で配管中に導入し、その内面にバイオフィルムを生成させることができるバイオフィルム生成用流路システムを光学実験台上に構築した。 次に、ワークステーションと流量可変式ローラーポンプを接続し、ワークステーションからの命令によりポンプの流量制御を行えるようにした。これにより、本システムを用いて配管内における流速とバイオフィルム成長速度の相関を検証することを可能とし、さらに流速に応じたバイオフィルム除去の時期の適切な推定を行うことを可能とした。 その上で、ファイバーレーザ(波長635nm)を光源とし、これを液槽や配管に照射した際に、それらの内面に形成されたバイオフィルムからの反射散乱光により発生するスペックルパターンをCCDカメラで撮像し、取得された画像データをワークステーションに転送できるバイオフィルム撮像用画像計測ユニットを構成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、バイオフィルム生成用流路システムの構築に関しては、流量可変式ローラーポンプによりバクテリア含有水を0.8~20.0ml/minの範囲内の流量に調整して液槽から汲み上げることにより任意の流速で配管中に導入でき、その内面にバイオフィルムを生成させられる流路システムを構築することができた。 また、ワークステーションによる流量可変式ローラーポンプの流量制御に関しては、ワークステーションとポンプを有線で接続した上で、ワークステーションからの命令によりポンプの流量を0.1ml/minの分解能で逐次制御し、これに基づき、本流路システムにより配管内における流速とバイオフィルム成長速度の相関を検証し、流速に応じたバイオフィルム除去の時期の適切な推定を行えるようにした。 さらに、バイオフィルム撮像用画像計測ユニットの構成に関しては、波長が635nmである可視領域のファイバーレーザを光源とし、これを液槽や配管に照射した際にそれらの内面に形成されたバイオフィルムからの反射散乱光により形成される斑点状の干渉縞であるスペックルパターンをCCDカメラで撮像し、取得された画像データを30frames/sのフレームレートでワークステーションに転送できる画像計測ユニットを構成することができた。 以上が、現在までの進捗状況をおおむね順調に進展していると評価した理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
バイオフィルム生成用流路システムの構築に関しては、現状ではシステムの構造上、バイオフィルム観測用の配管の交換に多大な手間を要するため、今後、配管の取り付け部分へのアダプタの導入等により、システムの改善を図っていく必要があると考えている。 また、ワークステーションによる流量可変式ローラーポンプの流量制御に関しては、現状では流量の制御分解能が0.1ml/minとやや低いため、今後、制御分解能を0.01ml/minまで向上させる必要があると考えている。 さらに、バイオフィルム撮像用画像計測ユニットの構成に関しては、現状では本ユニットがやや大型であるため、今後、汎用性を高めるためによりコンパクトなものに改良していく必要があると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画調書において令和5年度に設備備品費として計上していた「ワークステーション」が当初の見込額よりも安価で購入できたため、次年度使用額が発生するに到った。令和5年度に発生した次年度使用額に関しては、全額を令和6年度における物品費の一部として使用する予定である。
|