研究課題/領域番号 |
23K03909
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
増田 士朗 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (60219334)
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研究分担者 |
松井 義弘 福岡工業大学, 工学部, 教授 (40300545)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | データ駆動制御 / 繰り返し学習制御 / 制御性能最大化 |
研究実績の概要 |
本研究では、繰り返し動作する対象システムに対して,その制御動作のパフォーマンスを最大化するためのデータ駆動制御系設計手法を開発することを目的としている。2023年度は,このような研究目的に対してフィードフォーワード補償入力を繰り返し学習制御(Iterative Learning Control; ILC)で構成する一方でフィードバック制御器をIFT(Iterative Feedback Tuning)手法によって更新する手法の開発に取り組んだ。具体的には,フィードバック補償器の更新によりフィードフォワード補償設計のためのILCの学習対象が変化してしまう問題を解消するILCの更新法を与えた。また,非線形系に対してKoopman作用素を導入した線形モデルを導出し,そのモデルに対してILを設計する手法を与えた。また,バックステッピング法によるドローン制御実験を行い,積分補償や参照モデルの設定が制御性能に効果があることを実験的に検証する研究や非線形IFT法を利用することによってドローン制御系におけるPDゲインの調整法を与えた。また,データ駆動制御系によるフィードバック制御系の更新法として定値制御系に対するデータ駆動制御器調整法として予測誤差法を用いた制御器と外乱モデルの同時推定を行うVRFT法を提案する研究を行うとともに非線形系に対するVRFT法としてバックステッピング法を用いることによって非線形系に対しても系統的に制御系を構成し,VRFTにより制御器パラメータを調整する手法を与えた。さらに,対象システムから得られる時系列データを周波数領域に変換したのちに周波数領域におけるデータ駆動制御系設計を用いたPIDゲイン調整法や対象システムのモデリング手法に関して研究成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,研究目的を達成するため,繰り返し学習制御(Iterative Learning Control; ILC)手法とIFT(Iterative Feedback Tuning)手法に着目し,両者を併用することにより,繰り返し動作を行う対象システムに対して,その制御動作のパフォーマンスを最大化することを当初の課題として設定していた。したがって,2023年度の研究によってILCによってフィードフォワード制御入力の更新とIFTによるフィードバック制御器パラメータの更新を併用する手法で研究成果が得られたことは,本研究が順調に進展している理由と言える。さらに,本研究で開発した手法の応用対象として想定しているドローン制御実験について研究成果が得られた点やデータ駆動制御手法や強化学習法による制御性能改善について研究成果が得られたことは今後の研究の進展につながる重要な成果と言える。以上のことから本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度では,繰り返し動作を行う対象モデルに対して繰り返し学習制御と外乱抑制のためのIFTに着目し、両者をともに利用した場合に繰り返し学習制御の対象モデルが変化する問題に対し,補正項を繰り返し学習制御に加える手法を提案した。2024年度は,その研究成果をさらに拡張し,有限時間区間の繰り返し動作を行う対象モデルのパフォーマンス最大化を実現する手法の開発を目指す。具体的には,学習制御に用いるデータに雑音が含まれる場合や外乱が加わった場合への対応について検討を行う。さらに,2023年度では,ドローン実験装置に対してバックステッピング法の適用や非線形IFT法による制御器パラメータの調整法を適用する実験を行うことができたので,2024年度ではドローン制御実験に繰り返し学習制御を導入する取り組みを行う。また,2023年度では,強化学習法の1手法であるPolicy Iteration 手法によって定値制御系に対する外乱抑制性能を向上する手法の開発で研究成果を上げることができたので,2024年度では,Q-learning 法の導入に取り組むとともに強化学習法を繰り返し学習手法に導入することで繰り返し動作を行う対象モデルに対してパフォーマンスの向上を図る取り組みを行う。また,対象システムから得られる時系列データを周波数領域に変換したのちに周波数領域におけるデータ駆動制御系設計を行う手法を用いて周波数領域上でIFTを設計する手法について取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者に情報収集と研究打合せのために参加を予定していた旅費が予定より少額になったため,残額が生じた。残額分は2024年度に研究代表者の情報収集と研究打合せのための旅費としては執行する。
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