研究課題/領域番号 |
23K03924
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
伊藤 貴司 岐阜大学, 工学部, 教授 (00223157)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | ナノ炭素材料 / 電気二重層キャパシタ / 親水性 |
研究実績の概要 |
電気二重層キャパシタ(EDLC)の大容量化を目指し、カーボンナノウォール(CNW)電極の開発を行った。 CNWのウォール先端のみに親水性かつ絶縁性を示す酸化物を製膜する技術の開発を行った。スパッタ法によるCNWへ酸化ニッケル(NiO)を製膜した。また、NiOを製膜したCNWに対して、エネルギー分散型X線分光法(EDX)による断面評価を行った。その結果、製膜速度が遅い条件でNiOを製膜したCNWでは、ウォールの壁面全体にNiに関するEDX信号ほぼ一様であった。一方、速い製膜速でNiOを製膜したCNWではウォール先端から基板面方向にNiに関するEDX信号強度が減少することが分かった。以上の結果は、ウォール先端のみの製膜を可能とするためには、速い製膜速度での製膜が必要であることを示していると考えられた。 酸素プラズマ処理により親水性化したCNW電極を用いたEDLCを試作した。また、試作したその充放電特性評価を行った。酸素プラズマ処理していないCNW電極を用いたEDLCでは、ウォール高さが電気容量がほとんど変化しないのに対し、酸化プラズマ処理したCNW電極を用いたEDLCでは、ウォール高さの増加に対して電気容量が増加することを示した。この結果は、酸素プラズマ処理によりCNWの濡れ性が親水性に変化し、その結果ウォール間に電解液が侵入することでウォールの壁面が電極面として有効に働いたためと考えられた。以上の結果より、EDLC電極材料として親水性CNWが有効と考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、スパッタ法によるウォール先端のみに親水性かつ絶縁性を示す酸化物を製膜する技術を確立し、ウォール先端に酸化物を製膜したカーボンナノウォール(CNW)の濡れ性を評価する予定であった。酸化物製膜に用いていたスパッタ装置が故障し、ウォール先端のみへの酸化物製膜技術の確立までは至らなかったが、速い製膜速度が必要という、ウォール先端のみに酸化物を製膜可能とする指針は得られた。 酸素プラズマ処理によってではあるが、CNWの親水性化が、CNWの電気二重層キャパシタ用電極材料に有効であることが確認できた。 以上の点から、装置の故障というトラブルはあったものの、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
カーボンナノウォール(CNW)の電気二重層キャパシタ電極応用を目指し、以下のように進める。 引き続き、CNWへの酸化物製膜を行い、ウォール先端のみへの酸化物製膜を可能とする製膜条件などを調べる。ウォール先端に酸化物を製膜したCNWの濡れ性と電気的特性の評価を行い、ウォール先端への酸化物製膜の効果(影響)を調べる。また、Cu下地層上への作製によるCNWの低温成長を試みる。さらに、本研究で得られた親水性を示すCNW電極を用いたEDLCの試作とその特性評価を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
酸化物製膜に用いていたスパッタ装置が故障し、それに係る消耗品の消費が少なくなった。また、装置修理後に購入を予定していたターゲットなど、令和5年度内に納品が間に合わないものがあったため。 令和5年度中に納品が間に合わなかったターゲットの購入するとともに、本年度は研究を加速させることで消耗品の消費が当初予定より増加する予定である。
|