研究実績の概要 |
本年度は,Fe50Mn25Ga25を起点としたFe50-xMn25+yGa25+x-y(x=0~20, y=-5~15) 合金について,FCC 相とHeusler相の相安定性と磁気特性について明らかにすることを目的とした調査を行った. 800℃での熱処理後において, (Fe,Mn)濃度が濃い組成領域では広い範囲でFCC相が析出し30at%Ga付近に明確な相境界が存在していることが明らかとなり,相境界を越えた組成領域では他の相へ分離することがわかった.FCC相領域ではGa濃度が増加することで強磁性相関が増強し, Mn濃度が増加することで反強磁性相関が増強することが示され,その結果として,Ga 濃度の増加と共にフェリ磁性から反強磁性へと変化し,相境界付近において反強磁性-強磁性転移を示すことがわかった.FCC 相境界近傍ではFeとMnの組成比の制御だけで,Fe50Mn25Ga25と類似した砂時計型磁気ヒステリシスとハード強磁性型磁気ヒステリシスが得られることを見出した.350℃での熱処理後においては,単相のHeusler相は化学量論組成周辺のごく限られた範囲のみで得られ,正方晶XA構造やL21構造への構造変態は確認されなかった. 本研究により,800℃の熱処理で得られるFe-Mn-Ga合金の三元相図が示され,FCC相の相境界が30at%Ga付近に存在することが明らかとなった.その周辺組成において,FeとMnの組成制御によって交換バイアス効果や強い一軸磁気異方性が期待される磁気特性が同一合金系で得られることを見出した.今後は,FCC相の相境界付近の組成領域に対してより詳細な調査を行うことで,Fe-Mn-Ga 合金の機能材料としての可能性が示され,希土類元素を含まない新規機能性材料に関する基礎研究や応用研究へと繋がることが期待される.
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