研究課題/領域番号 |
23K03980
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中山 英俊 長野工業高等専門学校, 機械ロボティクス系, 教授 (10390452)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 表皮効果 / 負透磁率 / 高周波伝送線路 / 低損失 / 多層同軸ケーブル / 高周波透磁率測定 / 異方性磁界 / 形状磁気異方性 |
研究実績の概要 |
本研究は、高周波伝送線路を低損失化することを目的として、負透磁率を用いて表皮効果を抑制する超低損失多層同軸ケーブルを提案するため、同軸ケーブル形状等の磁気異方性の影響を考慮した磁性薄膜の高周波透磁率測定を確立するものである。 令和5年度は、同軸状磁性薄膜を用いた多層同軸ケーブルの試作を行い、その伝送特性の測定を試みた。長さ約10mmで、中心導体をCu/NiFe/Cuの3層で構成された多層同軸ケーブルを試作し、本研究で開発した外部磁場印加用ソレノイドコイルの内部に多層同軸ケーブルを設置して、外部磁場を変化させながらネットワーク・アナライザを用いて伝送特性の測定を行った。ソレノイドコイルに0~8Aの電流を流し、外部磁場を約0~500[Oe]の範囲で変化させて伝送特性を比較した結果、測定したSパラメータに僅かな変化が得られたが、外部磁場の変化による影響かは不確かな結果であった。今後、試作した多層同軸ケーブルの内部構造や寸法、使用した磁性薄膜の膜厚、導電率、飽和磁化などの特性を再確認して、実験結果の詳細な分析を進める予定である。 一方、磁性薄膜の高周波透磁率測定において、その基礎となる電磁界理論計算の改良を図り、計算結果によりSパラメータまで算出することが可能となったため、ネットワーク・アナライザでの測定結果との比較・検証が比較的容易にできるように改良できた。加えて、周波数によって変化する磁性薄膜の高周波透磁率に関して、LLG方程式により磁性薄膜の飽和磁化と異方性磁界をパラメータとして算出でき、高周波透磁率の周波数特性を加味した多層同軸ケーブルの伝送特性を算出可能となったため、伝送特性の測定結果から高周波透磁率を逆算する機能を高めることができた。 研究実績として、国内学会で関連する研究発表1件を実施することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で予定した同軸状磁性薄膜を用いた多層同軸ケーブルの試作を行い、その伝送特性の測定を実施することができた。測定結果は、外部磁場による変化が小さく、今後も詳細な分析などが必要な状況であったが、目標とした実験環境を構築することは計画通りに達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ネットワーク・アナライザを用いた多層同軸ケーブルの伝送特性の測定結果から、磁性薄膜の高周波透磁率を同定する必要があるが、現状では、印加した外部磁場の変化に対する伝送特性の変化が僅かであったため、高周波透磁率の確定が難しい状況であった。その原因は、試作した多層同軸ケーブルの状態が悪かった可能性と、本研究の高周波透磁率測定システムの不備の両面の可能性が考えられる。本研究の目的は、後者の高周波透磁率測定システムの開発であるため、今後は、高周波透磁率測定システムとして不備が無いことを確認し、より使いやすい機能やユーザーインターフェースの開発について、検討を進める予定である。一方で、同システムの開発には、実証実験が不可欠であり、前者の多層同軸ケーブルの試作を成功させることも重要である。多層同軸ケーブルの試作は、負透磁率を有する高周波磁性薄膜の開発を含めて、未知なる課題も多いため、材料開発を含めた試行錯誤を試みる予定である。もしも負透磁率を有する高周波磁性薄膜の開発が困難な場合は、代替手段として、通常の正透磁率を有する磁性薄膜を用いた多層同軸ケーブルで実験を行い、高周波透磁率測定システムの基礎的な動作検証を行うことで目標を達成することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画した使用額のうち、外部磁場印加用ソレノイドコイルの外注費について、他の外部資金の獲得により、当該年度の使用額を抑えることができた。一方で、ネットワーク・アナライザでの伝送特性の測定に必要な高周波プローブの破損が発生し、予期していなかった支出も生じた。結果的に、次年度使用額が多くなったが、今後も研究遂行に必要な経費が発生することが予想されるため、必要な物品購入や実験環境の不備への対応を進める計画である。
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