研究課題/領域番号 |
23K04097
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研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
李 善太 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60771962)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 抗生物質耐性大腸菌 / 畜産排水 / 環境水 / 下水処理場 / 存在実態 / 大腸菌ファージ / 薬剤耐性菌 / 水環境 |
研究実績の概要 |
本年度は、青森県八戸市周辺の畜産排水が流入する馬淵川(櫛引橋),浅水川(豊崎橋)と畜産排水が流入しない田面木池,坂牛川を対象に、抗生物質耐性大腸菌の存在実態を調査した。また、下水処理場と上記の環境水を対象に、検出した抗生物質耐性大腸菌を宿主菌として用いて、これらに感染する大腸菌ファージの存在実態についても調査した。検出した大腸菌の1剤以上の薬剤耐性割合は、浅水川(32%)、田面木池(32%)、坂牛川(29%)、馬淵川(11%)の順に高かく、2剤以上の多剤耐性割合は坂牛川(12%)、浅水川(10%)、馬淵川(9%)、田面木池(5%)の順に高かった。畜産排水が流入する浅水川は高い割合で抗生物質耐性大腸菌が存在していたが、馬淵川は畜産排水が流入しているにも関わらず、薬剤耐性割合と多剤耐性割合が最も低かった。抗生物質耐性大腸菌の薬剤耐性プロファイルの結果から、全てのサンプルでアンピシリンに耐性を示す抗生物質耐性大腸菌が検出されやすく、畜産排水が流入している馬淵川と浅水川のサンプルからはテトラサイクリンに耐性を示す抗生物質耐性大腸菌が検出されやすかった。抗生物質耐性大腸菌に感染する大腸菌ファージの存在実態調査では、薬剤耐性数が多い多剤耐性大腸菌ほど大腸菌ファージに感染されやすく、流入水が起源の多剤耐性大腸菌は二次処理水や放流水に比べて大腸菌ファージに感染されやすい傾向が見られた。下水処理場のサンプルでは多くの抗生物質耐性大腸菌に感染する大腸菌ファージが検出されたが、環境水のサンプルでは検出されなかったことから、抗生物質耐性大腸菌に感染する大腸菌ファージは環境水よりも下水処理場で検出されやすいことが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①畜産排水と放流先の水環境中における薬剤耐性菌の実態調査、②多剤耐性菌に効果的な除去・不活化方法の開発、③水環境中へ放流される薬剤耐性菌に対する抑制方法の提案を目的としている。今年度は目的①に対して、青森県八戸市周辺の畜産排水が流入する馬淵川(櫛引橋),浅水川(豊崎橋)と畜産排水が流入しない田面木池,坂牛川を対象に、抗生物質耐性大腸菌の存在実態を調べることができた。また、下水処理場と上記の環境水を対象に、検出した抗生物質耐性大腸菌を宿主菌として用いて、これらに感染する大腸菌ファージの存在実態についても調査を実施し、その際に多剤耐性菌と複数のファージを単離し、凍結保存できた。それらを用いて次年度は、目的②の多剤耐性菌に効果的な除去・不活化方法の開発について検討していく予定である。このことから、目的①に対して、着実に成果を得ており、研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き目的①の畜産排水と放流先の水環境中における薬剤耐性菌の実態調査を継続していくと同時に、凍結保存しておいた抗生物質耐性大腸菌と、これらに感染する大腸菌ファージを用いて、目的②の多剤耐性菌に効果的な除去・不活化方法の開発について検討していく予定である。家畜排水から検出された複数種類の多剤耐性菌に対して、選別されたファージカクテルを利用し、ファージカクテルのみ、ファージカクテルと塩素消毒の組み合わせ、ファージカクテルと紫外線消毒との組み合わせの3つの条件において添加実験を実施し、効果的な除去・不活化方法を検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究課題の遂行に必要な予算執行をした上で次年度使用額が生じた。金額が微少であるため次年度予算と合わせて使用する計画である。
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