アオコ形成シアノバクテリアの一種であるRaphidiopsis raciborskiiは近年の気候変動により、世界中の淡水域での分布拡大が懸念され、一部では肝臓毒であるシリンドロスパーモプシンを産生する。長らく日本においては、無毒の個体群の存在しか知られていなかったが、2008年に石垣島の1つのダム湖においてデオキシシリンドロスパーモプシンを賛成する有毒個体群の存在が初確認されていた。その後の石垣島のダム湖でのR. raciborskiiの侵入状況を明らかにするため、今年度、石垣島の4つのダム湖のモニタリング調査を行った。得られた水試料を用いて、シリンドロスパーモプシン合成遺伝子及び本藻RNAポリメラーゼ遺伝子の定量PCR解析を行うことで、有毒個体の存在量を推定した。また、シアノトキシンの濃度測定も実施した。結果、石垣島の4つのダム湖において、シリンドロスパーモプシン合成遺伝子のコピー数は本藻RNAポリメラーゼ遺伝子のコピー数と比較して圧倒的に少ないものの(数%程度)、5月に多く検出されることが明らかとなった。一方で、デオキシシリンドスパーモプシンの濃度はそれより遅れて6月に高濃度になる傾向があった。調査した4つのダム湖のすべてでデオキシシリンドスパーモプシンが検出されたことから、2008年と比較すると本藻の有毒個体は石垣島のすべての地域に侵入し、広がり、定着していることが示唆された。
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