研究課題/領域番号 |
23K04183
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
加藤 悠介 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (80455138)
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研究分担者 |
岡本 祥浩 中京大学, 総合政策学部, 教授 (70211810)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | Social Wellbeing / 福祉住居 / 地域拠点 |
研究実績の概要 |
本研究は、Social Wellbeingを促進する福祉住居を基盤とした包括的な地域環境モデルの構築を目指す。具体的には集合住宅の団地再生の一環として福祉住居の提供と地域拠点の整備を進める先駆的な事例を中心に調査を進め、Social Wellbeingに寄与する福祉住居と地域環境の要素を抽出し、その効果を実証することで、一人ひとりにふさわしい居住政策の提案につなげることを目的としている。 2023年度は、(1)Social Wellbeingの概念の整理、(2)調査対象の大曽根住宅において、居住者のSocial Wellbeingの状態を把握する予備的調査を実施した。(1)では、Tom Kitwoodにより提唱された認知症の人のニーズを参照した。そこでは、くつろぎ(Comfortable)、愛着(Attachment)、社会的一体性(Inclusion)、主体的活動(Occupation)、同一性(Identity)の5つの側面があげられており、生活の総体的なニーズを把握できるとともに、Inclusion、Occupationは個人と地域との関係性としてSocial Wellbeingを捉えられることがわかった。(2)では、ニーズを整理した調査項目を作成し、7名の居住者(高齢者4名、一般3名)にインタビュー調査を実施した。その際、5つの側面に対する充実度と各側面の相対的重要度を評価してもらった。その結果、住戸の広さや設備を評価し、趣味の時間や友人を招く機会が増えた居住者がおり、ComfortableやIdentityの側面に効果があることが確かめられた。それとともに、現在は入居後間もないが、今後、ボランティアや消防団などの地域の活動に参加したいという居住者もおり、生活におけるInclusionやOccupationの側面の相対的な重要性を示唆する結果も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、地域に分散する福祉住居を基盤とした包括的な地域環境モデルの構築を目指すために、(1)先駆的な事例である大曽根住宅の居住者の生活を経年的に分析すること、(2)大曽根住宅と他の福祉住居を比較分析すること、(3)文献調査や先駆的事例の視察調査から関連する知見を得ることを進める計画としている。2023年度は、(1)については2024年度から始める調査を行うための予備的調査、(3)については文献調査によるSocial Wellbeingの指標検討、先駆的事例の視察調査を実施することができた。 (2)については、適切な福祉住居の対象を選定するまでには至らず、継続して対象を探す必要がある。このように一部計画からは若干の遅れがあるものの全体としては、順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況を受けて、今後は研究活動を以下のように進める予定である。対象とする大曽根住宅の居住者への調査を2024年度と2025年度に実施する。インタビュー調査では15名ほどの居住者を選定し、アンケート調査では高齢者、障がい者、外国人の居住者で協力できる人を対象とする。大曽根住宅と他の福祉住居の事例を比較分析のための調査では、2024年度に対象を選定した後、高齢の居住者に焦点をあてたアンケート調査を2025年度に実施する予定である。文献調査および先駆的な事例調査については、今後も継続的に実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ整理が十分行えなかったため、2023年度はデータ解析ソフトの購入を見送った。また、データ整理の補助者の依頼も行わなかった。2024年度の早期にソフトの購入とデータ補助者への依頼の検討を行い、調査計画の変更も含めて、計画的に使用する予定である。
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