研究課題
高い形状安定性を有しつつ,インターフェース部の熱応力緩和と振動アイソレータ機能の付与を行うために,インバー材の3D造形技術を用いて,低熱膨張,低熱伝導なラティス構造を開発し,その機械特性評価(密度,低熱伝導率,圧縮剛性)を行った.その結果,既存の構造と比べて,約70%の大幅な軽量化と,90%以上の熱伝導率の低減が確認された.また,圧縮剛性についても,設計予測値と試験値が妥当な範囲で整合することが確認できた.このことから,熱伝導率,線膨張係数が一般的な金属材料の1~2桁下(2W/(m・K)以下,0.2×10^-6/K以下),アルミ合金よりも軽量な(見かけの密度2.5g/cm3以下)メカニカルメタマテリアルを実現できたといえる.次に,高精度変位計測装置のインターフェース部における熱応力緩和機構の設計を行った.シミュレーションによって,熱応力緩和機構が変位計測装置の指向安定度が20倍程度向上させることを確認した.さらに,インバー材の3D造形によって,実際の熱応力緩和機構を作成し,その性能を恒温槽試験によって確かめ,想定された性能が発揮できることを確認した.2024年度は,実際の運用環境(大気球実験環境:数hPa,-40℃以下)での性能評価を行う予定である.最後に,アルミの1/20程度といった低熱膨張性を有しつつ,100Hz帯域における振動アイソレータの研究を実施した.各種ばね形状の特性と剛性配置を検討し,現状,面外方向に対しては,ほぼ想定通りの伝達特性を有するアイソレータの実現ができた.2024年度以降には,多自由度に対する剛性配置の検討を行う予定である.
2: おおむね順調に進展している
当初想定していた剛性分布設計によるインターフェース部での熱応力緩和および振動アイソレート機能の付与については,進捗が遅れているものの,アプローチを変更し,実問題への適用を先に着手した.その結果,実問題への適用に関しては,計画より進んで研究開発が進行しており,全体としては,概ね順調に進展していると言える.
2023年度研究開発を実施した応力緩和機構の実際の運用環境での性能評価を行う予定である.実運用環境での評価結果を設計にフィードバックさせると同時に,より汎用的な設計論へつなげる.アイソレータについては,2023年度に検討したアイソレータ設計をベースにしつつ,多自由度に対する剛性配置の検討を行う予定である.
実験の進捗状況を鑑みて機材の一部購入と国際学会での発表を次年度に回したためであり,振動実験の一部機材と国際学会への参加費として,2024年度使用する予定である.
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