研究課題/領域番号 |
23K04254
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
榊原 繁樹 東海大学, 海洋学部, 教授 (50314513)
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研究分担者 |
阿部 郁男 常葉大学, 大学院・環境防災研究科, 教授 (30564059)
砂原 俊之 東海大学, 海洋学部, 教授 (40276788)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 大型船 / 津波係留対策 / 錨 / 錨鎖 / 錨泊 / 水理実験 / 段波津波 |
研究実績の概要 |
本研究では、大型船の津波対策として、係留索の増し取りや強度アップなどの硬い係留ではなく、本船の錨や錨鎖または外部から接続する錨鎖によるチェーン係留力(緩い係留)を用いた実用的な津波対策を見出ことを目的としている。 令和5年度では、東日本大震災で被災した90,000DWT級石炭船をモデルにした模型縮尺1/130の模型係留船を用いて、実スケール10m津波高さの段波津波来襲時まで計測した。津波対策となる追加錨鎖は、本船に艤装される錨鎖およびその長さを参照して、2種類の錨鎖径を選定して、段波津波の水位変動・流速、船体運動および錨鎖や係留索による係留力を計測した。これに際して、模型船を係留する係留索の張力を計測する張力計を新規に1基購入した。また錨鎖に作用する張力は既存の2分力計を用いて船体側固定部で計測するだけでなく、錨鎖の挙動を詳細に把握するために水底固定部に新たに購入した防水型張力計を設置して計測した。船体運動のPitch、Rollに影響する模型船の慣性モーメントを精度よく求めるために振り子式架台を購して活用した。高性能のPCを1基、当該数値計算で使用する解析ツールを新規に購入して、段波津波来襲時の模型係留船の船体運動や係留力の再現シミュレーションの構築を進め、当該水理模型実験の確認や津波対策の効果の検証に試行的に活用した。 令和5年度の研究実績から、追加錨鎖により係留索バネ定数を4倍に強化することによる係留限界津波高さの向上を保持したまま船体運動(Surge)や係留索張力を抑制できるものの、一方で過大な錨鎖張力発生の可能性も確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災で被災した90,000DWT級石炭船をモデルにした水理模型実験設備を用いて、実スケール10m津波高さに耐え得る錨鎖を用いた津波対策を見出すことを目的として、具体的には研究項目①~③を列挙して進めている。 ①大型石炭船を対象とした錨・錨鎖、外部から接続可能な錨鎖の選定および評価では、本船に艤装される錨鎖およびその長さを参照して2種類選定した。また段波津波来襲時の模型係留船の船体運動や係留力の再現シミュレーションの構築を進め、当該水理模型実験の確認や津波対策の効果の検証に試行的に活用した。 ②段波津波来襲時の船体運動および係留力の水理模型実験では、実スケール10m津波高さの段波津波来襲時まで模型係留船の水理実験を実施し、段波津波の水位変動・流速、6 モードの船体運動および錨鎖や係留索による係留力を計測した。 ③本船の錨・錨鎖または外部接続錨鎖による係留による津波対策の考察・提案については、令和5年度の研究実績から、錨鎖径や長さの見直し、シンカーやブイの追加などさらなる実用的な津波対策の立案を進ている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の研究実績から、追加錨鎖により係留索バネ定数を4倍に強化することによる係留限界津波高さの向上を保持したまま船体運動(Surge)や係留索張力を抑制できるものの、一方で過大な錨鎖張力発生の可能性も確認された。錨鎖張力を低減する手法として中間シンカーやブイの追加設置など、大型船の実用的な津波係留対策を見出すべく水理模型実験の実施と船体動揺シミュレーション構築とその効果の検証をさらに進めたく考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
津波計測用カメラ2台を購入予定であったが、性能向上と共に価格も変更となったため1台の購入に留まったことが主な原因となる。令和6年度も水理模型実験による検討を引き続き実施するため、津波係留対策の模型や実験消耗品などの購入に充てたく考えている。
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