研究課題/領域番号 |
23K04281
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研究機関 | 長崎総合科学大学 |
研究代表者 |
王 キ 長崎総合科学大学, 総合情報学部, 講師 (40816592)
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研究分担者 |
堀口 正之 神奈川大学, 理学部, 教授 (90366401)
來島 愛子 上智大学, 経済学部, 教授 (30408728)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 避難問題フレームワーク / 未知の推移確率行列 / マルコフ決定過程 / 区間型ベイズ推定法 / 制約付き最小二乗法 / 時系列分析 |
研究実績の概要 |
本研究では,避難問題フレームワークのもとでマルコフ決定過程によって定式化される数理モデルでの未知の状態推移確率の推定と退避経路の逐次的究明を可能にする最適化手法を明らかにすること、具体的には建物内の各部屋を状態とし推定確率行列によって表される離散的経過観測時点での状態推移確率(経路中の各部屋の滞在状況)を把握し、退避出口へ安全に誘導する退避経路問題を理論的およびシミュレーション的分析によって解明することを研究目的としている。推移確率の推定問題に関して,先行研究では実際のマクロデータを用い,最小二乗法で推移確率を推定したが,一般行列による推定手法であるため推定された行列はそのままでの確率行列とならずに推定精度が低い欠点があった。 本年度は,区間型ベイズ推定による確率行列推定に取り組んだ。区間型推定値は建物内にいる人の行動のシミュレーション分析に利用可能である。推定アルゴリズムでは,非線形方程式の解法によって対象となる関数の構造を考慮した改良された求解方法を模索し、分数関数型の不動点探索アルゴリズムによる推定手法を明らかにした。 また,状態数が増大すれば最適解探索の計算量も増大する”次元の呪い”が起こるため,推移確率行列推定の反復計算量に改良が必要となる。先行研究での制約付き最小二乗推定法は、マクロデータのサンプルサイズが大きくなく推移確率行列の推定が比較的に容易な推定法であるが,我々の扱う大規模問題において推移確率行列推定の計算時間の問題が解決できていない。そこで,列生成法による改良アルゴリズムによって,高次元の計算量が必要な問題と推定精度が悪い問題を解決すべく、具体的なデータを用いて推移確率行列の推定の研究に取り組んだ。制約付き最小二乗法と列生成法で推定された推移確率行列について,MAE 基準とカルバック-ライブラー情報量によってこれらの推定法の妥当性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究者と定期的なセミナー,打ち合わせを行っている。順調に計画通り調査と分析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
公募申請当初の計画に沿って引き続き研究を行う。積極的に関連分野の研究者らと議論し,本研究の関する幅広い分野にわたる調査と分析を行っていく。前年度のシミュレーションによる計算結果による吸収状態へ推移する確率を増大させる分析は,各状態の平均滞在時間も増大することが理論的に確認できる。それにより,最適避難誘導路の研究のためのシナリオ分析としてマイクロシミュレーションによる分析を行う。得られた研究結果は、適宜、学会発表と論文投稿によってピアレビューを受け、論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった計算機の価格が高く購入困難になったため、次年度に購入する。また、国際会議に参加する予定だったが、開催日が変更され、参加できなかった。
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