研究課題/領域番号 |
23K04340
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
常松 佳恵 山形大学, 理学部, 准教授 (90722207)
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研究分担者 |
大風 翼 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40709739)
瀬尾 和哉 工学院大学, 工学部, 教授 (60292405)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 火山岩塊 / シュリーレン法 / 衝撃波管実験 / 高速度撮影 / マッハディスク / 数値流体力学計算 |
研究実績の概要 |
本研究は火山岩塊のダイナミクスのうち、飛翔と噴出に関わる1. 岩塊の空力学的性質が飛翔軌跡に及ぼす影響の解明、2. 岩塊の噴出におけるガスの流れの影響の解明の二点を目的とした研究である。初年度は特に「 2. 岩塊の噴出におけるガスの流れの影響の解明」に注力し、衝撃波管実験とそれを再現するための数値流体計算を行った。詳細を以下に示す。 まず、衝撃波管を用いて、噴出時のガスの流れと、それによって押し出される岩塊に見立てたビーズの動きを可視化して画像に記録するための実験を行った。噴出口付近をシュリーレン法で可視化し、ガスの密度差をハイスピードカメラで撮影した。この実験では、噴出口付近におけるガスの流れの可視化に成功し、それだけでなく、ガスと共に噴出する岩塊に見立てたビーズの動きの可視化に成功した。これらの実験結果から、ビーズの速度・加速度を求めた所、非常に大きな加速度値が得られた。これは、ハイスピードカメラで撮影される場所が噴出口の周りの極限られたため、ビーズが重力の影響を受けて減速に転じる所が撮影されていないと考えられる。よって、今後はビーズの動きをさらに広い範囲で撮影し、解析を行いたい。 一方、数値流体力学計算による衝撃波管実験の再現にも着手した。衝撃波管実験で再現されたガスの流れを、数値流体力学計算モデルOpenFOAMを用いて再現する計算では、計算結果は得られているものの、実験結果と「マッハディスク」と呼ばれる衝撃波の形成される位置がずれるなど、再現計算についてはまだ課題があり、境界条件や計算に用いた数式の精査が必要な状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「1.岩塊の空力学的性質が飛翔軌跡に及ぼす影響の解明」については、すでに得られている空気抵抗係数、揚力係数、横力係数を解析し、形状と岩塊の空力学的性質の関係を議論することを始めている。また、数値流体力学計算を用いて、これらの係数を求める数値実験にも着手している。 「2.岩塊の噴出におけるガスの流れの影響の解明」においては、衝撃波管実験でガスの動きとビーズの噴出口付近での動きは捉えられた。また、ビーズの動きについては解析を行い、その結果を2023年12月に行われた「高速度イメージングとフォトニクスに関する総合シンポジウム」において発表することができた。ただし、実験結果を再現するための数値流体力学計算においては、実験で現れたマッハディスクやバレルと呼ばれる衝撃波の位置を再現できていない。この理由はいくつか考えられ、境界条件の違い、計算における円柱座標系への式変形が間違っていることなどが候補として挙げられるが、まだ理由が解明できていないため、理由の解明に注力している。 以上のような状況を考えると、数値流体力学計算についてはやや遅れが見られるものの、実験に関しては、予想していた以上に速やかに進めることができているため、総合的に見れば順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
「1.岩塊の空力学的性質が飛翔軌跡に及ぼす影響の解明」については、今まで得られたデータの解析を進めると共に、議論で必要なデータがあれば、新たに風洞実験を行ってデータを取得する。また、数値流体力学計算で空気抵抗係数、揚力係数、横力係数を求めることができるのであれば、実際に風洞実験を行わなくても形状や岩塊の運動とこれらの係数の関係を得られるようになるため、OpenFOAMを用いたシミュレーションを進め、結果を今までの実験結果と比較する。比較で実験と数値計算から得られた空力学的係数の値に大きな差が無い場合は、OpenFOAMシミュレーションを用いてさらに形状との関係について研究を進める。 「2.岩塊の噴出におけるガスの流れの影響の解明」について、今まではガスの動きを捉えることを考えていたため、シュリーレン法を用いていたが、よりビーズの動きを捉えやすいシャドーグラフなど他の手法を試していく。また、鉛直上向きに噴出した物体は、重力により加速から減速に転じる所があるはずである。実際の火山噴火の観測では、噴出直後の急激な減速を捉えている事例があるため、今後は撮影範囲を広げどの辺りでどのように減速するかを確認して、噴出直後の流れの影響がどの範囲まで及ぶかを議論したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
CFD用ワークステーションの購入がすぐには必要なかったため、次年度以降に購入することとした。すでにワークステーションの見積などは取得しており、昨年度の経費の残額が明らかになったところで発注する予定であったため、今年度発注する予定である。
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