研究課題/領域番号 |
23K04349
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
鳥井 真之 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 特任准教授 (40711908)
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研究分担者 |
副島 顕子 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (00244674)
鶴田 直之 福岡大学, 工学部, 教授 (60227478)
奥野 充 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (50309887)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | パッチ状植生 / 斜面崩壊履歴 / 群落組成表 / 植生図 / 深層学習 / 画像認識モデル |
研究実績の概要 |
斜面災害の発生要因(地震・豪雨など)と斜面状況(火山砕屑物や付加帯堆積物など地質の違いや風化など)そして植生との関係を把握するために,南阿蘇村東下田と,葦北郡芦北町女島周辺において,パッチ状植生に着目しつつ,それぞれ地表踏査,岩石試料の採取・分析および植生調査を実施した.東下田では,平成28年熊本地震とその後の豪雨で生じた崩壊地および,隣接する崩壊地形箇所での調査から,熊本地震での崩壊面や隣接する崩壊跡には夜峰山火山の溶岩が部分的に露岩しているが,溶岩の崩落は部分的であり,いずれも土壌やテフラの表層崩壊であった.熊本地震での崩壊面での植生は先駆植物のススキが広く生育し,カラスザンショウ等の先駆性の陽樹が侵入しているが,隣接崩壊跡では齢約60~70年のタブノキやヒノキ等の常緑樹が多くみとめられる.これらは,昭和28年6月西日本水害や昭和18年9月九州中南部における台風災害の時期と重なっていおり,パッチ状植生の調査により,空中写真等の情報が得られない時代の斜面崩壊履歴を把握できる可能性を示している.一方,令和2年7月豪雨で大きな被害を受けた芦北町女島天見岳を対象とした調査では,砂岩,泥岩,チャートなど付加帯堆積物からなっていること,そして先行研究では記載のない溶岩・凝灰角礫岩が山頂付近に分布していることが明らかとなった.令和2年7月豪雨での斜面崩壊箇所と地質との比較から,崩壊は山頂付近の火山岩を頂部としているものが土石流に移行しているものと,チャートがブロック状に崩壊しているケースが確認できた.植生については群落組成表に基づいた解析で植物群落のグループ分けを行い,植生図と照合することでパッチ状の群落の分布を明らかにした.そして,この植生図と航空写真を学習データとして深層学習を用いた画像認識モデルを構築し,航空写真から自動的に植生図を生成する試みをすすめている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パッチ状植生とその周辺での地質調査により,地質的な背景についての情報の取得は予定通りすすんでいる.また,植生調査についても植生図の作成も順調に進んでいる.一方で,パッチ状植生を自動識別を目指した,深層学習を用いた画像認識モデルを構築については,航空写真による植生の季節や時間,解像度が変化要因となり性能にばらつきがあることが判明し,季節ごとの学習データの入手など更なる工夫が必要なことが判明した.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度も,阿蘇カルデラおよび芦北地域での地質調査を進める.地質調査では崩壊斜面の,土壌の炭素年代測定やテフラ分析を実施し,崩壊時期の特定や土壌形成と崩壊との関係を明らかにする.植生についても,コドラート法などにより正確な植生図の作成をすすめる.画像解析技術については,季節ごとの航空写真を利用するなどにより,適切な学習データの把握を進める.さらに,令和6年能登半島地震では多くの斜面災害が発生しており,パッチ状植生と斜面災害の関係を理解するための貴重な事例となることから,地質と植生の現地調査を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
植生図を学習データとして深層学習を用いた画像認識モデルの構築のため,現地でのドローン撮影など画像データ取得のを予定していたが,植生図の作成が年度末までかかったため,今年度は基礎技術開発のため国土地理院など既存データを利用した.次年度は当初予定のドローン撮影など現地調査を実施する予定である
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