研究実績の概要 |
Ta-Te二元系ファンデルワールス層状準結晶を粉末焼結法により作製し、低温電気抵抗、比熱、磁化率の測定を行った。その結果、約1Kでゼロ抵抗、比熱のとび、完全反磁性に匹敵する大きな反磁性を観測し、バルク超伝導転移を明らかにした。これは準結晶では2例目、熱力学的に安定な準結晶では初の超伝導の発見である。 さらに、希釈冷凍機システムを用いて超伝導転移温度以下数十mKまで、臨界磁場の温度依存性を調べた。その結果、低温で通常の第II種超伝導の上部臨界磁場の温度依存性を説明するWHH(Werthamer-Helfand-Hohenberg)理論には従わず、大きく上回ることがわかった。また、実験結果から0 Kでの上部臨界磁場を外挿するとパウリ限界磁場(スピン常磁性効果で0 Kで超伝導が壊れる磁場)の2.3倍になることがわかった。この結果から、Ta-Te二元系ファンデルワールス層状準結晶ではスピン常磁性効果が抑制されていることが示唆される。 また、新たなファンデルワールス層状準結晶の探索および物性評価を目的とし、Ta-Te二元系に種々の第三元素の添加を試みた。粉末焼結法により得られた試料について、粉末XRD(X線回折)測定による相の同定を行った。第三元素としてCu, In, Seを添加した試料について、単相の準結晶相が得られた。これら単相試料が得られた試料について、電気抵抗測定を行った結果、いずれの試料においても1 K以下で超伝導転移が観測された。Ta-Cu-Te, Ta-In-Te, Ta-Te-Se三元系ファンデルワールス層状準結晶の超伝導転移温度はそれぞれ0.93 K, 0.87 K, 0.96 Kであり、Ta-Te二元系より若干低かった。
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