現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度においては,シェーライト構造を有するAEMO4(AE = Ca, Sr, Ba, M = Mo, W)をマトリックスとし,発光中心イオンとしてErを添加した系を中心に合成,評価を進めた.試料は固相反応法を用いて温度,雰囲気,焼成時間等の条件を変えて作製し,作製した試料の結晶構造および相同定を粉末X線回折により行った.アップコンバージョンスペクトル測定を行い,マトリックス及びEr濃度とアップコンバージョン発光強度について整理した.それらの原料に,更に炭酸アルカリ金属(A2CO3,A = Na, K, Rb)を加えた試料を同様に固相反応法で合成し,同様に粉末X線回折およびアップコンバージョン発光スペクトル測定を実施した.その結果,原料に炭酸アルカリ金属を添加することにより最大約8倍のアップコンバージョン発光強度の増大が確認できた.炭酸アルカリ金属を加えることによってアップコンバージョン発光強度が向上した原因を検討するために,熱重量・示差熱分析,蛍光X線分析などを行った.更に,発光中心イオンであるErの局所環境評価を目的にシンクロトロン放射光施設においてX線吸収端微細構造(X-ray Absorption Fine Structure: XAFS)測定を行うと共に,第一原理計算を用いたErの局所環境解析結果との比較を試みた.これらの解析はおもに原子配列を中心とした検討であったが,それらに加えて,紫外可視拡散反射スペクトル測定を行い,電子状態とアップコンバージョン発光強度との関係の整理に取り組み,第一原理計算から得られるバンド構造,状態密度との比較検討を行った.また,走査型電子顕微鏡観察による粒の形態,サイズの評価も行った.
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