研究課題/領域番号 |
23K04386
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
喜多 正雄 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00413758)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 酸化物半導体 / 閃亜鉛鉱型関連構造 / 超音波噴霧熱分解法 / 太陽電池 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,p型伝導を示す閃亜鉛鉱型関連構造のナローギャップ酸化物半導体Cu3VO4を光吸収層に,n型の酸化亜鉛(ZnO)を窓層とした太陽電池の基礎的知見を得ることを目的としている.これらの酸化物半導体の成膜には非真空プロセスによって消費エネルギーを抑えて成膜を行える環境適合性の高い超音波噴霧熱分解法を用いる. 本年度は温度制御が1点のホットウォール型と,温度制御が2点のコールドウォール型の超音波噴霧熱分解装置を用いてCu3VO4薄膜の成膜を行い,Cu3VO4薄膜の電気的・光学的特性を明らかにした.両装置とも原料溶液は,溶媒としてメタノールと硝酸,溶質にはビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム(Ⅳ)オキシドと酢酸銅(Ⅱ)-水和物を用いた.基板は無アクリルガラスを使用し,キャリアガスとして窒素ガスを使用し,希釈ガスには窒素と酸素の混合ガスを用いた. ホットウォール型の超音波噴霧熱分解装置では膜厚300 nmのCu3VO4単相薄膜の成膜に成功した.成膜したCu3VO4薄膜はHall測定によりp型の伝導性を有することが確認できた.報告されているスパッタリングで成膜されたCu2Oの電気的特性と比較して,キャリア密度の値は一桁大きかったが,移動度の値は約二桁小さかった.移動度を高くするためには膜の結晶性を高めるなどの改善が必要である.成膜したCu3VO4薄膜の透過率からTaucプロットを用いて算出した直接遷移のバンドギャップは,単接合太陽電池の理論変換効率曲線のピーク値1.4 eVに近いことから太陽電池の光吸収層に適した材料であることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホットウォール型とコールドウォール型の超音波噴霧熱分解装置を用いてCu3VO4薄膜の成膜を行った.ホットウォール型のみでCu3VO4単相薄膜の成膜に成功し,Cu3VO4単相薄膜の電気的・光学的特性を明らかにした.コールドウォール型ではCu3VO4単相薄膜が得られていないが,最終目的の達成にはあまり影響ないため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
温度制御が1点のホットウォール型に比べ,温度制御が2点のコールドウォール型の超音波噴霧熱分解装置は,より精密に温度制御が可能であるため,コールドウォール型の超音波噴霧熱分解装置を用いてCu3VO4薄膜の成膜条件の最適化を行い,高い結晶性のCu3VO4薄膜の成膜を試みる.また,これまでに成膜方法が確立されているホットウォール型で成膜したCu3VO4薄膜について,酸素中と真空中で熱処理をすることによって,Cu欠損および酸素欠損を導入することにより,Cu3VO4薄膜のp型とn型の電気的特性の制御を行う.今後は当初の計画どおり超音波噴霧熱分解装置を用いて,ZnOとCu3VO4薄膜を成膜し,Cu3VO4単接合太陽電池を構築し接合界面の評価やセルの変換効率の評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
太陽電池評価測定装置の購入を令和6年度にスライドしたため差額が生じた.令和6年度当初に購入する予定で研究計画に遅れは生じない.
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