研究課題/領域番号 |
23K04413
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
清水 一行 岩手大学, 理工学部, 助教 (30748760)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 水素脆化 / アルミニウム合金 / 放射光X線CT / 水素 / T相 / 変形破壊プロセス / クロスオーバー合金 / 亀裂進展 |
研究実績の概要 |
本研究は、T相を優先析出させた、高い耐水素脆性をもつ5xxx/7xxxクロスオーバー合金の創製に挑んでいる。 令和R5年度は、予定通り、T相析出型5xxx/7xxxクロスオーバー合金を試作後、T相の組成・構造をナノ組織解析し、変形破壊挙動を放射光X線CTでその場観察した。その結果、Zr添加型合金(AlZnMg-Zr合金)では、高水素状態かつ長時間の引張中断試験であっても15.8%の破断伸びを示し、水素脆性破壊(粒界・擬へき開破壊)をほぼ示さなかった。すなわち、Zr添加とT析出の両者によって、粒界・擬へき破壊が大きく抑制されたと言える。但し、2%程度ではあったが、擬へき開破壊を示した。このき裂の発生・進展プロセスを明らかにするため、SPring-8にて放射光X線CTその場イメージングを行った。そして、擬へき開亀裂は発生するものの、進展が大きく抑制されて鈍化することが可視化された。通常の水素脆性亀裂は、シャープな亀裂先端を維持したまま、小さなき裂進展駆動力で進展するが、試作合金の擬へき開亀裂は延性亀裂のように鈍化し、停留していた。この高い亀裂進展抵抗が、水素脆性破壊を抑制できた理由だと考えられる。 以上より、初年度は、T相析出とZr添加により、水素誘起擬へき開・粒界破壊の両者を防止できる、新奇Al-Zn-Mg合金を開発可能であることを実証した。さらに、Zr添加型T相合金では、擬へき開亀裂の鈍化という、従来のAl-Zn-Mg合金では現れない特異な破壊挙動を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に進展していると評価できる。その理由は以下の通りである。 (i)初年度に実施予定であった、T相析出型5xxx/7xxxクロスオーバー合金の試作ならびに組織評価が完了していること (ii)試作合金の変形破壊プロセスを放射光X線CTによりその場観察し、高い耐水素脆性を実証できていること、 (iii) 試作合金の特異な水素脆化防止挙動を直接可視化できていること
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、水素につよく高強度なAl-Zn-Mg合金を実現させるべく、研究を展開している。初年度の成果により、水素につよい合金の開発指針を達成しつつあるが、高強度化の点では課題が残っている。すなわち、高強度化のためのT相の高密度・微細析出および組成最適化には至っていない。次年度以降、試作合金を基本として、熱処理や組成を再調整し、その合金の水素脆化防止挙動を放射光X線CTによりその場観察する。最終的には、耐水素脆性・高強度アルミニウム合金を実現したい。
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