塑性加工法は被加工材に塑性変形を加えて成形するため、成形品にボイドなどの微小欠陥を残すことが多い。この微小欠陥が発達し、成形品の品質に何らかの影響を及ぼすレベルになると、成形欠陥と見なされる。成形欠陥がさらに成長すると、巨視的な材料破壊に至り、成形限界を迎える。材料破壊の限界ひずみは応力三軸度に依存し、単軸圧縮の応力三軸度付近では材料破壊の限界ひずみが急増するが、このあたりでは、座屈が発生するため板材を用いる試験が難しく、実験データが極端に少ない。さらに、単軸圧縮の応力三軸度以上の圧縮応力場においては材料破壊が発生しないとされている。 本研究の目的は、実験データの乏しい単軸圧縮に近接する圧縮応力場における材料破壊問題に対して、切削鍛造法を活用して破壊の発生条件を明らかにするとともに、切削鍛造法の工業利用のガイドラインを提供することである。そのため、切削鍛造における破壊の限界ひずみ-応力三軸度の関係を明らかにするとともに、巨視的な破壊に至る過程において微視的な欠陥の生成・成長の過程を観測する。 2023年度は研究室保有の切削鍛造加工装置の改良を行い、切削加工で製作したアルミニウム、銅および炭素鋼製の有底円筒カップに対して切削鍛造を行った。その結果、アルミニウムA1100、A5052および銅C1100材では、破壊は見られなかった。炭素鋼S25Cでは、切削パンチの切れ刃出口付近で微小な割れが多数観測された。
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