研究課題/領域番号 |
23K04447
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
柴柳 敏哉 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (10187411)
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研究分担者 |
山根 岳志 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 助教 (60272895)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 摩擦攪拌接合 / 変形場 / 塑性流動 / 可視化 / 透明作動流体 |
研究実績の概要 |
2023年度では、摩擦攪拌接合におけるツール近傍の金属塑性流動、すなわち高温変形の要素過程を透明作動流体による模擬実験を通して考察し、その知見から導き出される物理モデルをもって異種金属の摩擦攪拌接合における変形場を見通し良く議論し接合条件を最適化することを意図した基礎実験を実施した。 まず、透明作動流体の開発に注力した。擬塑性流体としての性質を示し、かつ透明であることを満足する流体としてこれまでにCVCなどの有機物を用いた流体を作製していたが、それらよりもより高粘度であり擬塑性としての性質が金属の降伏挙動に近いものを目指して種々試行錯誤を繰り返した後、「レオクリスタ」という商標で販売されている、セルロースナノファイバー含有流体が極めて良好な粘性挙動を示すことを見つけ出し、この流体を用いた可視化実験を行った。 異種材料接合における流動を模擬するため、上述の流体を高粘性と低粘性の2種類に調合し、それらを上下に重ね合わせて模擬接合実験に供した。種々のツール回転条件にてスポット接合(すなわち、ツールを移動させない接合)における流動観察の結果、金属の接合にて観察されている摩擦攪拌領域の形成に類似の流動を確認できた。下層の流体を高粘性タイプにした場合には、下層の流動挙動が上層の流動挙動とは異なることから2段構造の攪拌領域を形成することを始めて確認できた。さらに、ツール近傍攪拌領域において欠陥(穴)が形成されることに対する可視化が可能である実験結果を得ており、これについては2024年度でさらに詳しく観察・解析をすることになる。最後に、金属塑性変形と流体の流動挙動の物理的相似性の整合性を保証する理論解析に着手し、高温変形の式と無次元化された流体物性式の共通項を見つけ出し、これを通じて理論解析が可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最大の関門である透明作動流体による流動可視化技術について、最適な作動流体の開発に成功した。流動観察実験は全く問題なく実行できるレベルに高めることができている。金属と作動流体の物理的相似性については両者をつなぐ共通項として、それぞれひずみ速度とずり速度の相関から互いの物理量の読み替えが可能であることを見出し、その観点でのさらなる理論解析へと進む道筋ができた。金属材料での実験は、震災の影響があり実験計画が遅れてしまったが、これについては従前の研究データをもって今年度の可視化データの正当性の検証に用いることができている。実際の金属板を用いる接合実験については2024年度前半で集中的にこれを実施し、2023年度の遅れを取り戻すことにしている。
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今後の研究の推進方策 |
1)透明作動流体の実験は、開発に成功した流体を用いて、種々の粘性に調整した後に各種ツール回転速度にて流動観察を実施し、PIV(粒子速度場解析法)を用いたより詳細かつ定量的な流動場の解析へ進めて行く。 2)異種金属の摩擦攪拌接合実験では、シングルスパイラル、ダブルスパイラル、などの種々の形状の接合ツールを用いて、アルミニウム合金とマグネシム合金の接合実験を実施し、継手断面組織を金属組織学的に詳細に評価する。この時、接合中の荷重データや温度測定データを取得し、透明作動流体による解析、ならびに物理的相似性の検証へと研究をすすめる。 3)接合継手の力学特性評価については、最適接合条件で得られた継手について、マイクロビッカース硬さ試験ならびに室温一軸引張試験を実施し、継手組織との相関を明らかにする。
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