研究課題/領域番号 |
23K04453
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
伴野 信哉 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究センター, 主幹研究員 (30354301)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Nb3Sn / Sn / 拡散 / 結晶組織 / Hf添加 |
研究実績の概要 |
CuはSn拡散を促進する上で欠かせない元素であるようだ。本研究では、Ti-HfおよびTa-HfをドープしたNb3Sn層中のCuならびにSnの粒界拡散挙動を調べるため、走査型透過電子顕微鏡(STEM)およびTEMベースの自動結晶方位マッピング(ACOM-TEMM)を実施し、Hf添加によってCuならびにSnの拡散が促進されることを明らかにした。見方を変えれば、Nb3Sn結晶粒界で構成されるネットワークが、Sn拡散の最小のナノ拡散ネットワークでもある。 HfドーピングはNb3Sn層に微細化効果をもたらしたが、その程度はTi-Hfでは比較的小さかった。STEM/EDSマップを見ると、粒界に沿ってCu-Sn側から多量のCuが流れ込んでいることがわかった。それがTi-Hfで特に顕著であり、Nb3Sn層中の元素添加で、CuとSnの拡散度合いに違いが現れることが示唆された。また、粒界にCuが多く析出することで、Nb3Snの粒成長が促進される可能性も露見された。 走査型電子顕微鏡-電子後方散乱回折法(SEM-EBSD)によるカーネル平均方位ずれ(KAM)分析では、Ti-HfとTa-HfのNb合金母相の内部ひずみ状態に顕著な違いは見られなかった。STEM/EDSによって新たに発見された注目すべき点は、Nb3Sn層中にCu-Hf化合物相が存在することであった。Cu-Hf化合物は、Cuマトリックスを持つNb-47Tiが熱処理されたときに形成されるCu-Ti化合物に類似している。これはCuとHfの結合性の強さを反映していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sn拡散におけるCuの影響を調べることが本研究課題の重要課題の一つである。今回、Nb3Sn層内の添加元素によって、SnおよびCuの拡散挙動が異なることが示されたのは大きな成果であり、今後のNb3Sn層形成メカニズムの解明に大きく貢献することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
TiやHfがNb3Sn層内にあると、SnおよびCuの拡散挙動が変化することが今回明らかとなった。TiやHfの添加場所は、Nb3Sn層形成メカニズム解明の中でしばしば議論の的となるところで、添加場所の影響をより深く掘り進むことは重要と考える。今後はTi、Hfをはじめとした候補添加元素について、Nb3Sn層内だけでなくCu母材層への添加も視野に入れた広い視点から、Sn・Cu拡散挙動について研究していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた試料断面研磨・観察作業が減り、消耗品費がその分若干低くなった。その分は2024年度分と合わせて使用する。
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