研究課題/領域番号 |
23K04468
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
佐藤 剛史 宇都宮大学, 工学部, 教授 (60375524)
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研究分担者 |
三木 英了 宇都宮大学, 工学部, 教授 (30796371)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | pH応答性膜 / ポリアクリル酸 / 酢酸 |
研究実績の概要 |
まず、pH応答性を有するポリアクリル酸(PAA)を外径6 mm, 内径4 mm, 平均細孔径100 μmのα-アルミナ多孔質管支持体へ被覆し膜とする手法の開発を行った。支持体に対し、TEOSによる表面上への水酸基の導入、シランカップリング剤によるアミノ基導入、塩化アクリロイルによる炭素-炭素二重結合の導入後、アクリル酸によるラジカル重合を行い膜とした。合成した膜のIR観察等により、膜内にポリアクリル酸が存在していることを明らかとし、PAA被覆多孔質膜が作成されていることを確認した。 化学種の膜透過特性を評価するため、循環型の透過試験測定装置を作成した。種々のpHに調整した酢酸水溶液を用いて、酢酸のパーミアンスとpHの関係を評価した。その結果、pH上昇によりパーミアンスが減少した。これは高pH域における PAAのポリマー鎖膨潤にともなう細孔径の減少と酢酸イオンとPAAのカルボキシラートイオン間の静電反発の寄与によるものと考えた。また、酢酸濃度を0.1 mol/L, 1.0 mol/Lとした場合の両方でパーミアンスがほぼ一定であるため、本膜は幅広い濃度範囲に適用可能であることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における重要なpH応答性膜の作成に成功しており、データが取得可能な状況となっているため順調と考えている。今後は検討例を増やすことが重要である。
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今後の研究の推進方策 |
現在検討している酢酸に加え、分子径や官能基が異なる化学種について、pHを酸性から塩基性に変化させた水溶液を調整し、パーミアンスとpHの関係を評価する。また、混合溶液におけるパーミアンスとpHの関係も評価することで、共存化学種の影響を明らかとする。その結果をもとに、pH変化を利用した膜透過による化合物分離の可能性を検証する。pH変化にともなう膜の透過特性変化について、透過物の分子径とポリマー膨潤にともなう細孔径減少や透過物と膜表面の静電反発等の関係性を考慮し、それらを用いた透過モデルの構築を行う。得られたモデルを用いた計算を行うことで、本膜を用いた分離プロセスを提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
より多種類の化合物に関する測定を行う予定であったが、それを次年度に行うこととしたために予算の繰り越しを行った。
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