研究課題/領域番号 |
23K04473
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
熊谷 和夫 神戸大学, 先端膜工学研究センター, 特命教授 (30735030)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 浸透圧補助逆浸透 (OARO) / 膜分離 / 有機溶媒濃縮 |
研究実績の概要 |
浸透圧補助逆浸透(OARO)法は操作圧力よりも高濃度(高浸透圧)への濃縮を可能とする新しい膜濃縮法で、従来のRO法では達成不可能な高浸透圧領域の高濃縮を実現できる方法である。OARO法による濃縮はこれまで、塩類の濃縮に適用した報告はあるものの、有機溶媒水溶液の濃縮に適用した報告はない。そこで本研究では、OARO法を用いて有機溶媒水溶液を高濃縮する方法の実現を目標に研究を行った。1年目は、塩水濃縮で実績のある酢酸セルロース中空糸膜をOARO膜として用い、種々の条件で膜分離実験を行い、有機溶媒水溶液の高濃縮が可能であるかを検討した。有機溶媒水溶液として5wt%イソプロパノール(IPA)あるいは5wt%ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、操作圧力や供給流速、膜面積、還流比等を変えて実験を行った。その結果、膜面積1.1m2の膜モジュールを5本直列に繋いだシステムで、6MPa、50ml/minで供給液を膜濃縮した場合、IPA水溶液では濃縮濃度28wt%を24時間以上、DMF水溶液では同40wt%を72時間以上維持できることが分かった。IPAよりもDMFのほうが濃縮が進む理由として、分子量の違い(IPAの分子量60、DMFの分子量73)により、DMFのほうが阻止性が高いためと考えられた。DMF水溶液の濃縮では、更に3か月の連続濃縮でも、濃縮濃度約40wt%を維持できることが分かった。DMF濃度1wt%からであれば、40倍に濃縮できることが確認されたことになる。これらの結果から、希薄有機溶媒水溶液の高濃縮にOARO法が非常に有用であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
浸透圧補助逆浸透(OARO)法は操作圧力よりも高濃度(高浸透圧)への濃縮を可能とする新しい膜濃縮法で、従来のRO法では達成不可能な高浸透圧領域の高濃縮を実現できる方法である。OARO法による濃縮はこれまで、塩類の濃縮に適用した報告はあるものの、有機溶媒水溶液の濃縮に適用した報告はない。そこで本研究では、OARO法を用いて有機溶媒水溶液を高濃縮する方法の実現を目標に研究を行った。1年目は、塩水濃縮で実績のある酢酸セルロース中空糸膜をOARO膜として用い、種々の条件で膜分離実験を行い、有機溶媒水溶液の高濃縮が可能であるかを検討した。有機溶媒水溶液として5wt%イソプロパノール(IPA)あるいは5wt%ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、操作圧力や供給流速、膜面積、還流比等を変えて実験を行った。その結果、膜面積1.1m2の膜モジュールを5本直列に繋いだシステムで、6MPa、50ml/minで供給液を膜濃縮した場合、IPA水溶液では濃縮濃度28wt%を24時間以上、DMF水溶液では同40wt%を72時間以上維持できることが分かった。IPAよりもDMFのほうが濃縮が進む理由として、分子量の違い(IPAの分子量60、DMFの分子量73)により、DMFのほうが阻止性が高いためと考えられた。DMF水溶液の濃縮では、更に3か月の連続濃縮でも、濃縮濃度約40wt%を維持できることが分かった。DMF濃度1wt%からであれば、40倍に濃縮できることが確認されたことになる。これらの結果から、希薄有機溶媒水溶液の高濃縮にOARO法が非常に有用であることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
希薄有機溶媒水溶液の濃縮にOARO膜法が非常に有用であることが1年目の検討で確認された。2年目は、濃縮効率の更なる向上を目指して、膜の分離性能の向上の検討を行う。1年目の検討で用いた酢酸セルロース膜は、塩水の濃縮においては高濃度でも阻止率の低下は殆ど起こらないことが確認されているが、有機溶媒の場合は高濃度になるほど酢酸セルロース素材自体が溶媒を吸収して膨潤し、水透過性能が低下し、阻止性も低下する傾向がある。そこで、阻止性低下を抑え耐溶剤性を高めるため、熱処理等による膜の緻密化や架橋ポリマーによるコーティング等の検討を行う予定である。膜の改変条件を検討し、有機溶媒阻止性との関係を明らかにし、より安定に高濃縮ができる条件を見出す。
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