研究課題/領域番号 |
23K04474
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
後藤 邦彰 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (20215487)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 粒子層 / 鉛直加振 / 充填 / 流動化 / 粒子付着力 / 分離力 |
研究実績の概要 |
申請時の計画に従い、振動波形、周波数(駆動周波数と称す)、振幅(駆動振幅と称す)が制御できる加振装置を作製し、加振円筒容器に重力充填した試料粒子堆積層と試料板上に重力または機械的圧密により形成した粒子層、それぞれについて加振時粒子挙動が測定できる実験装置を構築した。 円筒容器内粒子堆積層での加振実験では、表面高さの経時変化を測定し、駆動振幅以上の粒子層表面の上下振動回数をカウントし、表面振動周波数を求めた。また、容器内への重力充填時充填率と30分加振後の充填率で定義できる層の圧縮度も求めた。加振実験を行った結果、粒子径に依存する特定駆動周波数において表面振動周波数が急激に増加することがわかった。圧縮度は駆動周波数の増加に対し増加する傾向を持つが、単調な増加ではなく、表面振動で観測された特定駆動周波数において一度減少した後、再度上昇する傾向を持つ。この傾向は、地震による地盤の液状化現象で定義されている土壌の固有周波数と類似しており、本結果は、ミクロンオーダーのいわゆる付着性乾燥粉体の堆積層も固有振動数を持つ可能性を示唆するものと考える。 試料板上に形成した粒子層に加振する装置については、基本条件である単一粒子として板上に付着した粒子に対する加振実験を行い、加振前後の付着粒子数から加振による粒子除去率を求めた。実験の結果、除去率は単振動の最大加速度から定義される振動強度には依存せず、試料粒子材質、粒子径に依存する特定周波数において最大となることがわかった。また、基本周波数に倍音が含まれた複合波形で加振した場合、単振動での加振よりも除去率が高くなることもわかった。よって、固体壁の振動により付着している単一粒子に生じる加振力は振動波形に依存することを示すものと考えられる。このことは、基本周波数、振幅が同じでも、加振力が最大となる振動波形が存在する可能性があることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度となる令和5年度内に、申請時の計画通り、振動波形、周波数(駆動周波数と称す)、振幅(駆動振幅と称す)を制御した固体壁加振が可能な加振装置が作製でき、それを用いて、円筒容器に重力充填した試料粒子堆積層と試料板上に重力または機械的圧密により形成した粒子層、それぞれについて加振時粒子挙動測定ができる実験装置を構築できた。さらに、その装置を用い、基本波形と設定した正弦波での加振実験を行い、研究計画時に想定していたように、容器内粒子堆積層については土壌の固有周波数加振と類似した層挙動を定量的に確認することができた。 また、試料板上に重力または機械的圧密により形成した粒子層については、基本条件となる、粒子が独立して固体壁に付着する単一粒子での付着状態だけであるが、加振により粒子に生じる分離力は単振動の最大加速度で定義される振動強度には依存せず、特定周波数で最大となる結果、および、分離力が最大となる加振波形の存在が示唆される結果が得られている。まだ、粒子径範囲、粒子材質、粒子形状などについて、加振時の粒子挙動への影響を検討すべきパラメータがあるが、申請時に想定していた本研究の学術的独自性が確認できた。よって、現在までに本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の成果として、容器内粒子堆積層については土壌の固有周波数加振と類似した粒子層挙動を定量的に確認することができた。このことは、申請書において計画している、振動条件制御による層崩壊・流動化促進の可能性を示す。よって、今後は、流動化が促進される特定周波数の支配因子を検討する。そのために、まず基本条件である粒子特性と装置条件に着目する。すなわち、昨年度と同様の、球形粒子を対象として、粒子径および粒子材質の異なる試料粒子を用い、同様の実験を行い、特定周波数に対する粒子特性の影響を検討する。また装置条件として、解析において軸対象が仮定できる円筒容器で、直径と高さのアスペクト比を変えた容器で実験を行い、特定周波数に及ぼす容器条件の影響を検討する。合わせて、今後の流動状態のモデル化のため、その基礎データになると考える壁面振動の粒子層内伝播についても実験的に検討する。具体的には、非接触変位計を2台用い、容器振動と粒子層表面振動を同時計測し、その粒子表面振動の振幅減衰と位相差を測定する。粒子層高さを変えてこの測定を行うことで、粒子層内の振動伝播をモデル化する。 また、試料板上に試料粒子群を重力または機械的圧密により形成した粉体層については、粒子が独立して固体壁に付着する単一粒子での付着状態での加振が、板の振動により生じる分離力モデル化には重要であるので、令和5年度に引き続き単一粒子での付着状態に着目する。その系において、位相差のある2つの正弦波の合成波での加振実験除去実験を行い、振動波形が加振により粒子に生じる分離力に及ぼす影響を検討する。また、容器内粒子充填層の実験に用いる、粒子特性の異なる試料粒子で除去実験を行い、粒子特性と分離力関係を検討する。。そのうえで、板上への粒子付着量を変えた実験を行い、粒子層への加振モデルを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度に配分された直接経費はすべて、「研究実績の概要」に示したように、研究計画に従った実験装置の作製に使用した。この実験装置作製の費用の他、申請時には種々の試料粒子を用いての実験を想定して消耗品費を挙げていた。しかし、装置作製後に実験を開始したところ、当初より基本粒子として用いることを予定していた現有の球形シリカ粒子の実験により計画時に想定していた現象が把握でき、他の試料を用いる前に基本粒子での詳細な実験を行うこととした。そのため、試料粒子購入を予定して挙げていた消耗品分が次年度使用額となった。令和6年度には計画通り粒子特性の影響を検討するため、複数種の試料粒子を用いる予定であるので、この次年度使用額は試料粒子購入費(消耗品費)として使用予定である。
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