研究課題/領域番号 |
23K04476
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
森貞 真太郎 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (60401569)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / ナノデンドライト / 白金 / 液相還元合成 |
研究実績の概要 |
金属ナノ粒子の液相還元合成では,還元剤や保護剤,共存イオンによって得られるナノ粒子の形態が変化することがある.研究代表者らは最近,白金(Pt)ナノ粒子の液相還元合成において,亜鉛(Zn)イオンが共存することで樹状(デンドライト)構造を有するPtナノ粒子(Ptナノデンドライト)が得られることを見出した.そこで本研究では,Znイオンを用いた液相還元法によるPtナノデンドライトの合成条件の確立と得られたPtナノデンドライトの特性評価を行うことで,Znイオンのようなありふれた金属カチオンの共存がPtナノデンドライトの形成に果たす役割を明らかにすることを目的としている. 本年度は,Znイオン(ZnCl2として添加)の添加量が得られるPtナノ粒子の形態に及ぼす影響について検討を行った.Ptの仕込み比をZn/Pt = 0-10の範囲で変えてナノ粒子の合成を行ったところ,Zn/Pt = 0.05以上でデンドライト形状となること,およびZn/Ptが大きくなるほどPtナノデンドライトの枝が細長くなることが明らかとなった. また,走査透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光分析器(STEM-EDS)を用いてPtナノデンドライトの成分分析を行ったところ,デンドライト中のPtとZnの比が合成時の仕込み比とほぼ等しいという結果が得られた.Znが還元されていない場合,ZnCl2として存在すると予想されるが,Clはほとんど検出されなかったことから,還元されたZnがPtと共存していると推測される. さらに,Ptナノデンドライトの比表面積を評価するため,CV測定によって電気化学的有効比表面積(ECSA)を算出したところ32 m2/gであった.この値は直径9 nmの球状Ptナノ粒子に相当する値であることから,40 nm程度のPtナノデンドライトは多孔性であることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,Ptナノデンドライトの成分分析は,洗浄後に王水で溶解させ,ICP発光分光分析装置によって実施する予定であったが,十分な精度を得るために必要な試料量を得ることが容易ではなかったため,STEM-EDSによる方法に変更を行った.同様に,比表面積も窒素吸着測定によって評価する予定であったが,測定に必要な試料量が非常に大きいことから,電気化学的手法による評価へ変更した.これらの変更はあったが,今年度予定していた実施計画に沿って研究を進め,ほぼその目的を達成することができたため,順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果において,Znイオンは還元されてPtと共存している可能性が示された.しかし,Znの標準電極電位から考えると,本系で還元剤として使用している水素ではZnイオンは通常還元されないはずである.そこで,Znの仕込み量が異なるPtナノデンドライトの成分分析を実施することで,Znの還元についてのさらなる検証を行う.また,Zn以外の金属カチオン種を添加したPtナノ粒子の合成を行い,他の共存カチオンの影響についても検討を行う.用いるカチオン(金属イオン)の条件としては,①周期表でZnと近い,②Znイオンと同じ二価のカチオンである,③水に可溶な塩化物塩を形成する,③水素よりも卑である(標準電極電位が負である),④FeやMnのように酸化数の異なるカチオン種が存在しない(酸化還元反応が複雑になる可能性があるため),⑤比較的安価で入手できる,⑥中性領域で沈殿を形成しない,などが考えられる.そこで,これらの条件を満たすNiイオン(NiCl2)およびCdイオン(CdCl2)を用いてPtナノ粒子合成を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は4万円弱であり,本年度の予算使用状況はほぼ予定通りであったと考える.
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