研究課題/領域番号 |
23K04498
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
高垣 敦 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (30456157)
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研究分担者 |
阪東 恭子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (50357828)
久保 利隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70344124)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | メタン |
研究実績の概要 |
本研究はアルミナ白金触媒を用いて、メタンと窒素酸化物を低温で変換し、合成上有用な化合物であるHCNやCH3CN、NH3等に変換することを目的としている。HCNの生成は300℃から観測され、その後温度の上昇とともに生成速度は増加していった。反応温度400℃においては、長期にわたり安定した触媒活性を示し、反応前後における触媒の粒子径分布の変化はほとんどなかった。一方で、反応温度を425℃以上にすると、初期活性は非常に高いものの、すぐさま収率の低下が見られた。この原因について、in situ FTIRとin situ XAFS測定によって検討した。FTIR測定では、300℃での反応初期においてはPt-CO吸着種が観測され、その後はCN種に由来する吸収が反応温度の増加とともに見られた。また、XAFS測定では、反応前後の差スペクトルをとることによって、XANESスペクトルに変化が見られた。FTIR測定と同様に、反応初期では、既往の研究でPt-CO吸着種に由来するエネルギー位置に吸収の増加が観測された。反応温度を上昇させると、1eVほど吸収のエネルギーシフトが起こり、その後同じ位置で増加していった。これはFTIR測定におけるPt-CN種の増加と類似していた。XANESスペクトルで見られたこの吸収は、反応温度の上昇とともに単調に増加しただけでなく、425℃では反応時間とともに増加していった。この測定の際に、同時に質量分析計MSによってHCNの生成をモニターしたところ、425℃においては、反応時間とともに減少していった。この吸着種はPt上に非常に安定して吸着しており、Heパージでも変化がなく、水素処理によってHCNとして脱離した。このことより、Pt-CN種はHCNの生成には必要な中間体と考えられるものの、一方で、その吸着種が多く触媒表面を被覆すると活性が低下してしまうことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in situ XAFS測定によって反応機構に関する考察ができるようになった。ただし、より詳細な解析を今後行う必要がある。そのための予備検討を本年度実施した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ、Pt-CN吸着種による活性への影響については一定の結論が得られた。しかしながら、反応の機構についてより詳細に検討する必要がある。そのため、研究計画にも記したように変調励起分光法を用いて、真の反応中間体を追跡する。また、得られた知見をもとに、目的生成物をより選択的に得られるための反応条件の設定や触媒の調製を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初R5年度計画ではin situ XAFS測定において、放射光施設においてDXAFSを用いた変調励起分光法による測定を予定していた。しかしながら、研究代表者が異動し研究室を新しく立ち上げることになり、R5年度は測定に参画するメンバーが確保できなくなった。しかし、R6年度では測定に参加できるメンバーが確保できるようになったため、本格的な測定を実施する。
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