研究課題/領域番号 |
23K04523
|
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
客野 遥 神奈川大学, 工学部, 准教授 (10746788)
|
研究分担者 |
緒方 啓典 法政大学, 生命科学部, 教授 (10260027)
松田 和之 神奈川大学, 工学部, 教授 (60347268)
千葉 文野 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (20424195)
秋山 良 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60363347)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 分子吸着 / ナノ細孔 / カーボンナノチューブ / アルカン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1次元ナノ空洞による気相分離と液相分離において、気相と液相とで選択的分子吸着現象(分子選択性の強さ・序列など)にどのような違いがあるかを系統的に明らかにすることである。具体的には、空洞サイズ、温度、混合気体/液体の混合割合、分子の形状(大きさや内部自由度など)などによって選択性がどのように変化するかを、種々の実験と理論計算から総合的に調べる。ナノ空洞として単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を、混合気体/液体としてアルカンを用いる。 本年度は、主に平均直径1.34nmのSWCNT試料について、液体状態の直鎖状アルカン(デカンまたはヘキサン)の吸着実験を行った。高エネルギー加速器研究機構内の放射光実験施設(ビームライン8B)において、アルカンを滴下したSWCNT試料の粉末X線回折(XRD)実験を行い、得られた実験データは、古典分子動力学(MD)計算の結果を用いて解析した。その結果、滴下したアルカンはまずSWCNTの空洞内部に吸着し、空洞内部がおおよそ満たされた後にSWCNTバンドルの表面へも吸着することが示唆された。また、昨年度に予備的に行った重水素核の核磁気共鳴(NMR)実験の結果についても、今年度に得られたMD計算の結果と照らし合わせて詳細な解析を行った。その結果、デカンとヘキサンとでは、SWCNT内部空洞での運動状態が異なることが分かった。今後は、分子吸着のSWCNT直径依存性や温度依存性、さらに吸着選択性に対する分子の形状(長さや大きさ)の影響などを系統的に調べるつもりである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画していた通り、本年度の研究は、単一種類のアルカンのSWCNTへの吸着現象に着目して行われた。XRD実験、NMR実験およびMD計算を用いた総合的なアプローチにより、SWCNTに吸着したアルカンの吸着サイト、吸着量、構造、分子ダイナミクスを詳細に解析可能であることが示された。すなわち、次年度以降に選択的吸着現象を調べるための基盤となる知見が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も、当初の研究計画に基づいて研究を推進する。研究手法には、XRD実験、NMR実験、MD計算に加えて、赤外分光実験も用いる。まず、平均直径1.34nmのSWCNT試料について、2種混合アルカンを滴下した際の選択的吸着現象を調べる。混合するアルカンの種類・混合割合などをさまざまに変えて、吸着選択性がどのように変化するかを調べる。次に、異なる直径のSWCNT試料へと研究を展開し、吸着現象の直径依存性を調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は、種々の吸着実験とMD計算とを並行して進める計画であった。しかし、実験条件を定める上での指標として、MD計算が当初の想定以上に有用であることが分かったため、MD計算による物性予測を実験よりも先行させて行った。その結果、当初の計画よりも実験消耗品(SWCNT試料、試料精製用薬品、重水素化アルカン試薬など)の使用量が少なくなり、次年度繰越金が生じた。繰越金は、次年度にこれらの実験消耗品の購入に充てる計画である。
|