研究課題/領域番号 |
23K04533
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
吉田 絵里 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60263175)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 炭酸 / 二酸化炭素捕捉 / 酸塩基反応 / 高分子アミン / イオン交換反応 / 高分子電解質 / 自己組織化 / ナノカプセル |
研究実績の概要 |
炭酸は化学的な反応性が高いにもかかわらず、二酸化炭素の水への溶解度が小さいために水中に存在する炭酸の濃度が低く、そのため、炭酸は材料開発の原料として認識されてこなかった。そこで、本研究では水中で炭酸を効率よく捕捉する化合物の探索と、炭酸を捕捉した化合物の材料設計への応用について検討を行った。 低分子および高分子のアミノ化合物について、水中での炭酸の捕捉効率と保持能力を、アミノ化合物の水溶液のpHの変化や電気伝導度の測定によって評価した。その結果、同じアミノ基濃度に対して、高分子アミンであるポリアリルアミン(PAA)が炭酸の捕捉効率と保持能力が高いことがわかった。この炭酸の捕捉について、PAAの分子量の影響を調べた。分子量の異なる3種類のPAA(Mw=1600, 5000, および15000)について調査した結果、PAAの捕捉効率は分子量に依存しないことがわかった。一方、電気伝導度は分子量の増加により低下した。同じ分子量のPAAの塩酸塩電解質を用いて詳細に検討した結果、この電気伝導度の低下は、分子量の増加によって溶液の粘度が上昇したことに起因することが明らかになった。また、PAAは、水溶液に窒素と二酸化炭素を交互に導入することによって、可逆的に炭酸の脱着を繰り返すことがわかった。 さらに、炭酸を捕捉したPAAの材料設計への応用を目的として、PAAに捕捉された炭酸の一部をドデシル硫酸ナトリウムでイオン交換した。その結果、PAAに捕捉されたドデシル基の自己組織化によって、ナノサイズのカプセルが形成された。このカプセルは、PAAの分子量や濃度に依存して球状や棒状に変化した。これらの研究成果をまとめた論文は、国際的な学術誌に掲載され、国際会議でも招待講演を行った。また、国際的な賞であるAsia's Outstanding Researcher Award 2023が授与された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の計画調書では、2023年度の研究計画は「水中で炭酸を効率よく捕捉・脱離する塩基試薬を用いて、炭酸の捕捉と脱離に連動して立体的なかたちを変化させる、ナノサイズの高分子集合体の創製までを行う」ことになっている。この計画を達成するために、「炭酸の捕捉と脱離を効率よく行う塩基試薬の高分子化」と「炭酸の捕捉と脱離に連動して立体的なかたちを変化させる高分子集合体の創製」をその検討項目とした。この研究計画通り、水中で炭酸を効率よく捕捉する高分子化した塩基試薬を見つけ、また、異なる気体を交互に導入する方法を、炭酸の捕捉と脱離に連動させることができた。さらに、炭酸を捕捉した高分子塩基試薬をイオン交換反応によって界面活性剤様の構造に変換し、その自己組織化から、ナノサイズの高分子集合体であるナノカプセルを創製することができた。このように、当初の研究計画をすべて達成し、本研究課題は現在までおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の研究調書に記載の研究計画にしたがって、2024年以降は「炭酸を捕捉するとプラスに帯電することを利用して、反対の電荷をもつ高分子との静電気的な引力によってナノサイズの複合体を創製し、その内部に炭酸を貯蔵できるかを調べる」ことについて研究を推進する。その方法として「炭酸の捕捉で帯電した高分子による高分子複合体の形成」、「炭酸を貯蔵する高分子複合体の創製」、および「炭酸の捕捉による電解質への応用」を検討する。2024年度は、その第1の検討項目である「炭酸の捕捉で帯電した高分子による高分子複合体の形成」についての研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度の当初計画では、海外で開催される国際会議に対面形式で参加して、この計画で得られた成果を口頭で研究発表することを予定していた。その国際会議に参加するための海外渡航費に、本補助金の一部を当てることを計画していた。しかし、国際会議の開催直前に自身がコロナウィルス感染症に罹患したため渡航が難しくなり、急遽オンラインでの参加に変更した。その結果、海外渡航費として使用する予定だった補助金分を、次年度に参加する国際会議の渡航費に使用することにした。次年度使用額が生じたのはそのためである。
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