研究課題/領域番号 |
23K04586
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
本多 信一 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (90324821)
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研究分担者 |
新部 正人 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 客員研究員(研究員) (10271199)
肥後 祐司 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (10423435)
庭瀬 敬右 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (50198545)
佐藤 庸平 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70455856)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 高温領域における構造相転移 / 放射光X線回折法によるその場観察技術の開発 / 中性子照射高配向性熱分解グラファイト(HOPG) |
研究実績の概要 |
高圧高温実験で使用される高圧高温セルの開発を行った。特に高温領域(1000~2000℃を超える領域)まで安定に昇温可能で、同時にその場X線回折法(XRD)を実施可能な構造・材料の設計と試験を行い、セルを完成させることが必要である。圧力媒体には断熱性の良い(MgCo)O(Coを添加したMgO)を使用した。断熱材としてLaCrO3とMgOを、圧力マーカーとしてPt箔を、ヒータ材としてTiC・Al2O3とTiB2・BNの2種類を使用した。 開発したセルのX線の透過性、高圧処理と高温処理に対する耐性等を調べるために、SPring-8のBL04B1に設置された高圧高温その場XRD装置を用いた。試料には、HOPGを用いた。 HOPGのGraphite(002)(G(002))面のピークに着目したところ、2種類のヒータ―材を用いたいずれのセルでも、室温下で圧力の増加に伴い、ピークの位置がシフトし、c面間が減少していることが分かった。また、両方のセルにおいて、15 GPaまで昇圧した。TiC・Al2O3をヒータ材として用いたセルでは、G(002)面のピーク付近にAl2O3関連ピークが多く存在するため、ピーク判別がやや難しいことが分かった。また、加工に際してTiB2・BN は旋盤で加工することが出来たが、TiC・Al2O3は硬度が高く、超音波加工が必要であった。TiB2・BNをヒータ材として用いたセルでは15GPaの高圧下で1600℃までの昇温に成功したが、1600℃以上の領域ではヒータの抵抗値が不安定となり安定して昇温を行うことが出来なかった。 また、印加する圧力を5 GPaに低くした場合には、さらに低い温度までしか昇温できず、不安定になることが分かった。これは、いずれも昇温に伴うBNの構造相転移が影響しているものと考えている。一方、TiC・Al2O3をヒータ材として用いたセルでは、15GPaの高圧下で2070℃という高温領域まで安定して昇温することに成功した。また、印加する圧力を5 GPaに低くした場合にも1500℃まで昇温できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高圧高温実験で使用する高圧高温セルの開発がおおむね順調に進展した。TiC/Al2O3セラミックスをヒータ材に採用することにより、2070℃までの昇温に成功した。その際、その場XRDを実施可能な構造・材料の設計と試験を行った。また、入射X線、高圧高温セル内の試料、そして検出器の幾何学的配置を検討し、G(002)面のピークを出やすくする、セル内に同時に複数の試料がセットできるようにすること等も考慮して設計した。そうすることにより、c面の欠陥密度の異なる試料の比較が可能となり、中性子照射量の影響も明らかにすることが可能となった。 試験には、BL04B1の光学ハッチ3に設置してあるSPEED-Mk.Ⅱ高圧プレスを使用した。2段型マルチアンビルを使用し静水圧に近い環境下で等方的に圧力を加えた。X線ラジオグラフィーによる試料形状の観察と、測定箇所の決定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
開発したTiC・Al2O3ヒータを内蔵したセルを用いて高温領域におけるその場XRD測定を実施する。同時に高圧下での温度の測定技術の開発にも取り組む。高圧下での温度測定については、熱電対を使用する方法、実験後に同条件で温度校正実験を行う方法等があるが、安定した手法でない、実験の効率が悪い等の課題がある。具体的には、異なる熱膨張係数をもつセラミックスを入れて温度を見積もる方法に注目する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会参加の一部が、オンライン参加になったため、旅費が少なくなった。 次年度では、消耗品に充てる予定である。
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