研究課題/領域番号 |
23K04640
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
石川 法人 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (90354828)
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研究分担者 |
田口 富嗣 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員 (50354832)
篠嶋 妥 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (80187137)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | イオン照射 / ナノ構造 / セラミックス |
研究実績の概要 |
高速重イオンビームを照射したジルコニアにおいて形成されたイオントラックとナノヒロックを透過型電子顕微鏡で微細観察した。ナノヒロックの寸法が10 nm 程度であり、局所溶融した領域の寸法と同程度であることが分かった。したがって、一旦溶融した結果としてイオントラックとナノヒロックが形成されたということが強く示唆された。次に、イオントラックを観察すると、他のセラミックスでは見られない特徴的な長方形の断面形状をしており、かつ結晶構造が溶融前と比較して大きくは変化していないことが分かった。したがって、他のセラミックスと異なり、ジルコニアにおいては、局所溶融後に、結晶構造を反映した異方的な再結晶化が起きていることが強く示唆される。一方で、イオントラックの中心部には、飛跡に沿った低密度のコア領域が形成されており、イオンビームが入射した表面への物質移動により物質欠損が形成されていることも判明した。上記の結果から、物質欠損を伴う条件においては再結晶化が不十分となり、その結果として、飛跡のごく近くでは低密度コア領域が形成されたのだと説明できる。以上の研究結果をまとめて、N. Ishikawa, S. Fukuda, T. Nakajima, H. Ogawa, Y. Fujimura, T. Taguchi, Ion Tracks and Nanohillocks Created in Natural Zirconia Irradiated with Swift Heavy Ions. Materials. 2024; 17(3):547. (https://doi.org/10.3390/ma17030547)の論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度においては、高速重イオンビームを照射したジルコニアにおいて形成されたイオントラックとナノヒロックに対する透過型電子顕微鏡による微細観察を通じて、「研究実績の概要」に挙げた研究成果を得ることができ、さらに研究成果を学会発表や論文発表まで行うことができたため、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
高速重イオン照射に伴うイオントラック形成のメカニズム解明を目的として、再結晶化と物質移動をキーワードとして研究を進めていく。初年度は、再結晶化に関する現象解明に注力して、ジルコニアを研究対象とした。翌年度からは、物質移動に関する現象解明が期待できるシリコン酸化物を研究対象として研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度においては、得られた実験結果を早急に論文化して公表することを優先したため、当初計画にあった実験に必要な物品のうち、一部の装置部品の購入を翌年度に行う様、研究計画を変更した。そのため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、実験結果の取得状況を踏まえて見直しを図り、令和6年度分経費と合わせて、実験に必要な試料や装置部品等の購入に係る費用として使用する予定である。
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