研究実績の概要 |
本年度の研究では,申請者が保有する銅耐性および金属還元能を有する糸状菌Fr-B株 (Aspergillus versicolorと近縁)のゲノムDNA抽出およびナノポアシークエンスとMGIseqのハイブリッドアッセンブルによりドラフトゲノムを決定した.Fr-B株のゲノム解析の結果,34.5Mbpの配列が決定し,scaffoldsが2044配列また推定遺伝子領域(ORF)は1,070,371配列見つかった。近縁であるA. versicolor D5のORF数は12,702であるが,今回得られた結果はその約90倍であったことから,解析したFr-B株のゲノムDNA配列が断片化していたといったことが推察された.しかしながら,今回のゲノム配列決定により同属の既知株で明らかにされているゲノム配列と近い塩基配列決定ができたと考えられた.得られたゲノム情報に基づきBlast+プログラムによって銅耐性に関与すると考えられる遺伝子の相同性検索を行った.その結果,Aspergillus nidulans(A. versicolorとの近縁種)のTPA:copper resistance P-type ATPase(CrpA,YgAおよびCrdA)の3つの遺伝子が銅耐性に関与する候補遺伝子として見出された.遺伝子配列の情報から,CrpAは1,211アミノ酸残基,YgAは1,182アミノ酸残基,CrdAは109アミノ酸残基であることが分かった.この結果に基づき,当該遺伝子をクローン化するため,一定期間培養したFr-B株からのRNA抽出およびcDNAの合成を目指したが,RNA抽出条件が適切ではなかったため,短鎖化していないcDNAを得られなかった.
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