研究課題/領域番号 |
23K04675
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
村上 龍大 埼玉大学, 理工学研究科, 特任助教 (20756960)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 反応動力学 / 核量子効果 / 分岐反応 / データ科学 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
反応経路分岐機構を解明するために,星間反応や有機合成反応などの計8つの系に対して,化学反応動力学法を用いて研究を行った.動力学シミュレーションの初期座標と運動量を求めるために,遷移状態サンプリング法を開発した.これにより,遷移状態周りで量子統計ボルツマン分布に沿った初期座標と運動量を得ることが出来る.安価な半経験的手法(GFN2-xTB)やΔ機械学習ポテンシャル関数を採用し,ダイナミクスシミュレーション中のポテンシャルエネルギー計算を行った.ただし,半経験的手法のパラメータに対して機械学習法の遺伝的アルゴリズムを用いて最適化を行い,計算精度を効率的に向上させている.原子核の量子効果を適切に描写できるリングポリマーを時間発展させることにより動力学シミュレーションを行い,生成比を算出した.さらに,データ科学に基づく機械学習法を活用し,分岐反応の生成物を予測できる機械学習モデルを構築した.具体的には,上述の動力学シミュレーションの各基準振動モードの初期座標,運動量(初期条件)とそれに対応する結果(生成物)を相関づけて学習させた.構築した分類モデルから,生成物分岐に大きく関与する初期運動量を抽出することに成功した.原子核の運動量が分岐に大きく関与することを示し,さらに座標情報のみならず,運動量情報をモデル構築の学習データとして扱えることを提示した.当該研究成果は、4編の論文として国際学術誌に掲載されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計8つの系に対して,動力学シミュレーション及び機械学習解析を用いて研究を行い,遷移状態での原子核の運動量が,反応分岐比を支配している要因の一つであることを明らかにした.本研究について,すでに4報の論文が国際誌に掲載されている.
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究で,2-ヒドロキシチオアクロレイン(2-アミノアクロレイン)と1,3-ブダジエンの環化付加反応では,気相中と液相中(連続溶媒和モデル)で生成比が逆転するということが明らかとなった.今後,明示的に溶媒分子を考慮した動力学シミュレーションを行い,生成比が逆転する原因についての詳細を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
機械学習アルゴリズムの活用により,予定より計算コストを抑えてシミュレーションが可能となったので,計算機購入を見送った.近年の機械学習技術の急速な発展に伴い,GPGPUマシンの購入費に計上する.さらに,国際学術誌のオープンアクセス費や国内外の学会出張費に計上する.
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