研究課題/領域番号 |
23K04707
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
森 重樹 愛媛大学, 学術支援センター, 講師 (30572028)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ポルフィリン / 二環性骨格 / 積層型錯体 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、a)購入可能でキラルなシクロヘキサジエンを出発とした光学純度を保ったピロール誘導体の合成法開発、それを構成単位とするキラルBODIPY、ポルフィリンなどの色素分子の効率的構築・光学物性の評価、b)二環性骨格特有の適度な剛直性を用いた、ピンセット型分子合成と微小空間による曲面構造化合物の識別と分離、c)ビシクロ[2.2.2]オクタジエン(BCOD)を組み込んだ前駆体法による共役拡張ポルフィリンを配位子とする、ポルフィリン‐ランタン系金属イオンの積層型多核金属錯体の構築、の3項目を柱とした二環性骨格導入による新物性発現、機能探索である。以下に今年度の成果を挙げる。 1 キラルな天然有機化合物である(-)-α-フェランドレンを出発物質としたピロール合成法の確立を試みた。これまで精製段階において他の異性体を含んでおり、温度・湿度などの影響により、光学純度の向上は困難であったが、前駆体の純度、反応条件の精査、種結晶法の確立などにより、単一異性体を得ることに成功した。 2 BCODを組み込んだポルフィリン二量体の研究が主であったが、物性などが未解明である二環性骨格にNBD(Bicyclo[2.2.1]heptadiene)を導入したポルフィリン二量体の合成に取り組んだ。課題であったNBD縮環ポルフィリン合成における低収率について、二環性骨格の環歪みに注目した。二重結合を単結合に変更したNBE(Bicyclo[2.2.1]heptene)縮環ピロールを用いて [2.2.1]縮環ポルフィリンを収率よく合成し、環歪みの緩和が収率向上につながることを見出した。この知見を活かし、部分的に飽和したアセン骨格を持つ[2.2.1]縮環ポルフィリン二量体の構築に成功した。 3 ポルフィリン二量体を配位子とする三層型La二核並びに四核錯体の構築を精査し、収率向上を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、本研究は3項目を同時に進めている。 a)においては単一ジアステレオマーを単離、それを元にBODIPY、ポルフィリンの構築に成功している。CDスペクトル測定の結果より、BODIPY、ポルフィリンとも光学活性であることを明らかにした。 b)についてはNBD特有の環歪みに由来する反応性によって、ポルフィリン構築が困難であり、還元した形であるNBEにすることでポルフィリン構築が容易に進行することを見出した。 c)はこれまで低収率に留まっていた三層型La二核並びに四核錯体に関して、合成条件、精製方法の改良によって収率向上を達成し、各種物性データの収集につなげることが可能となった。 これらの成果を元に、日本化学会中国四国支部大会、日本化学会春季年会での発表を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
光学活性色素化合物に関しては、計画通り、分光学、電気化学データなど、各種物性データを測定する。ピンセット型分子に関しては、上述の通り、NBE骨格で目的とするポルフィリン二量体が得られる見込みが立ったため、合成法の確立、その後、ゲスト分子の包摂化能の解明を目指す。積層型錯体については合成・精製方法の確立が最優先事項であるが、そちらが終わり次第、磁性をもつ錯体の形成にも取り掛かり、物性評価を共同研究者を通じて検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に実験室、測定機器が設置されている建物の大規模改修が実施された。2023年6月に仮移転先への引っ越し、2024年2-3月に戻りの引っ越し作業があり、2ヶ月程度、研究実施を中断した期間があったため、次年度使用額が生じた。 前述の引っ越しを機に、一部の古くなって腐食が進んでしまっていた汎用実験器具(ガラス器具固定用のスタンド、クランプ)などを新たに購入する計画である。
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