研究課題
R5年度は、トリオキソトリアンギュレン骨格のβ位(炭素骨格の3つの頂点部)に窒素原子を導入した分子の合成を試みた。その中で3つのβ位の炭素原子のうち、一つを窒素原子に置き換えた分子の合成に成功した。この分子について電気化学測定や紫外可視吸光スペクトルから窒素原子導入の効果を調べた。また、モノアニオン塩の単結晶X線構造解析に成功し、結晶中で分子間水素結合を形成していることを明らかにした。また、このモノアニオン塩を用いて中性ラジカルの合成も行い、固体状態では空気中でも高い安定性をもつことを明らかにした。
3: やや遅れている
当初の予定では、令和5年度中にトリオキソトリアンギュレン骨格の3つのβ位に窒素原子を導入した分子の合成を完了する予定であったが、反応性などの問題により目的分子の合成を達成できていない。しかし、1つの窒素原子を導入したものの合成に成功したことで、その合成法や反応性に関する知見が得られたため、今後の合成計画を立てる上で有用な知見が多く得られた。また、1つの窒素原子を導入したものの物性に関する知見は、3つとも置換したものや異なる位置で窒素原子を導入したものの合成に有益であると考えている。
令和6年度は前年度に引き続き、これまでの研究成果で得られた知見をもとにトリオキソトリアンギュレン骨格の3つのβ位の炭素原子を窒素原子で置き換えた分子の合成に挑戦する。またそれと並行して、トリオキソトリアンギュレン骨格のα位の炭素原子を窒素原子に置き換えた分子の合成も検討する。後者については前年度の状況を踏まえ、まずは一つの窒素原子で置換したものの合成を行い、その知見をもとに3つとも窒素原子に変換したものの合成方法を検討する。合成したものについては、電気化学測定や各種分光測定により窒素原子導入がその電子構造に与えた影響について調査する。単結晶X線構造解析により、固体中での分子配列、特に分子間水素結合に着目して集合構造を調べるとともに、遷移金属イオンとの集積型二次元金属錯体の合成にも挑戦する。
物質合成が計画通りに進まなかったために、うまくいかなった分の次年度使用額が発生した。前年度に進められなかった研究は、本年度の研究計画と並行して実施するため、翌年度分として請求した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件)
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