研究課題/領域番号 |
23K04733
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
秦 猛志 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (40419271)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 含窒素反応活性種 / 遷移金属触媒 / ニトロアレーン / グリニャール反応剤 / アジド / ヒュスゲン環化 / トリアゾール / 含窒素ヘテロ分子 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,これまでの研究成果(Cu触媒 (J. Am. Chem. Soc. (2008年),Pd触媒 ((Org. Lett. (2011年), Angew. Chem. Int. Ed. (2012年), Heterocycles (2015年)), Rh触媒 ((Chem. Eur. J. (2014年),Chem. Eur. J. (2016年), Tetrahedron Lett. (2019年))および予備的知見をもとに,遷移金属触媒または有機金属反応剤と活性種前駆体から発生する含窒素反応活性種を利用して,効率的に含窒素化合物を合成する手法の開発することを全体の構想とし,鋭意検討した.特に令和5年度は,以下の3項目に関して研究を推進し,それぞれの項目で成果を得ることができた.1) ニトロ化合物と有機亜鉛反応剤の還元的カップリング反応により,官能性ニトロンが得られることを見出した.2) ポリハロニトロアレーンとアリールグリニャール反応剤から得られた多官能性アミノビアリールに残存するアミノ基やハロゲン基を足がかりに,ヘキサアリールベンゼンに誘導できることを見出した.3) 1-(ω-アジドアルキル)-2-(2,2-ジハロビニル)アレーンの分子内ヒュスゲン環化付加により得られたハロ置換3環性トリアゾールから炭素鎖伸長および分子内カドガン反応により,トリアゾール環が融着した蛍光性の多環性化合物に誘導でき,がん細胞を染色することができた.なお,上記1~3)は全て日本化学会第104春季年会にて報告済みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の具体的な研究の成果として,以下の結果が得られた.1) 第3級ニトロアルカンにニトリル基のような官能基を有する有機亜鉛試薬を作用させたところ,官能性ニトロンを立体選択的に収率良く得ることができた。2) ジブロモクロロニトロアレーンとフェニルグリニャール反応剤を作用させて得られたアミノ置換ビフェノールに対し,順次鈴木-宮浦カップリング反応,ブロモ化,ザンドマイヤー反応によるアミノ基のブロモ基への変換,再度鈴木-宮浦カップリング反応により、ヘキサアリールベンゼン誘導体を効率的に合成できた.3) 1-(2-アジドエチル)-2-(2,2-ジブロモビニル)アレーンから得られたブロモ置換3環性トリアゾールに対し,o-ニトロフェニルボロン酸をカップリングさせ,続いてトリフェニルホスフィンを作用させると,分子内カドガン反応により,トリアゾール環が融着した蛍光性の5環性化合物に誘導でき,肝がん細胞 (JHH4細胞) を染色することができた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の更なる飛躍を目指して,含窒素反応活性種を利用した効率的な含窒素化合物の合成手法の開発および応用利用をより一層検討する.特に,一部予備的知見で見出している以下の知見を集中的に展開する.具体的には,1) Rh触媒とトリアゾールからのヘテロ環合成法 (Chem. Eur. J. 2016年, Tetrahedron Lett. 2019年) の更なる展開を実施する. 2) 令和5年度に見出した,ポリハロニトロアレーンとフェニルグリニャール反応剤を作用させて得られたアミノ置換ビフェノールから,全て置換基の異なるヘキサアリールベンゼンを合成する.3) 令和5年度に見出したトリアゾール環が融着した多環性化合物合成の更なる応用展開を実施する(一部をOrg. Biomol. Chem. 2024年に発表済み).
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 公益財団法人からの研究資金資金の獲得により、使用しない分が生じていたため. (使用計画) 研究加速のために,主に試薬品代や小型備品購入に使用する.
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