研究実績の概要 |
本研究課題では、医薬や農薬などとしての活用を志向し、含フッ素有機化合物の合成法について検討を行なっている。鍵となるのはこれまで活用例が限られていたフッ素置換基を有する有機金属中間体であり、令和5年度は、ジフルオロアレンの付加環化を基盤とするフッ素置換環状金(I)カルベン錯体の調製と利用を達成した。 具体的には、アルデヒドやケトンのジフルオロビニリデン化で容易に調製できる1,1-ジフルオロアレンに対し、金(I)触媒存在下で種々のアルデヒドを作用させた。ここではまず、フッ素置換基による特異な安定化を受けたジフルオロアリル型カルボカチオン中間体が生じる。アルデヒドの位置選択的付加ののち、生成したビニル金(I)中間体が金原子のβ位で五員環を形成することで(付加環化)、目的としたジフルオロテトラヒドロフラン骨格を有する環状金(I)カルベン錯体を得た。このカルベン錯体は直ちに水素移動を起こし、フッ化水素の脱離を経て、三置換2-フルオロフランを与えた。 本反応は、1,1-ジフルオロアレンとアルデヒドからフラン骨格を構築しながら位置選択的にフッ素導入も行うと言う高効率な手法であり、医薬品や農薬の開発分野に三置換2-フルオロフランの合成法を提供している。
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