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2023 年度 実施状況報告書

炭素-窒素軸不斉チオアミド誘導体の触媒的不斉合成と不斉反応への応用

研究課題

研究課題/領域番号 23K04755
研究機関芝浦工業大学

研究代表者

北川 理  芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30214787)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード軸不斉 / アトロプ異性 / ラクタム / チオラクタム / エノラート / アリル化 / 立体選択性 / 位置選択性
研究実績の概要

これまでほとんど報告されていなかった光学活性炭素ー窒素軸不斉チオアミド誘導体の合成と不斉反応への応用,ならびに構造特性の解明を目的に検討を行なう.2023年度は炭素ー窒素軸不斉構造を有するN-(2,5-di-tert-butyl)-3,4-dihydroquinoline-2-thione(軸不斉チオラクタム)の不斉合成と,軸不斉チオラクタムより調製したエノラートとアリル系ハロゲン化物との反応について検討を行なった.
すなわち,以前高エナンチオ選択的触媒的合成に成功しているN-(2,5-di-tert-butyl)-3,4-dihydroquinolin-2-one(軸不斉ラクタム,98% ee)をLawesson試薬で処理すると,光学純度を損なうことなく,軸不斉チオラクタム(98% ee)が良好な収率(95%)で得られることを見いだした.引き続き,軸不斉チオラクムより調製したエノラートとアリル系ハロゲン化物(臭化プレニル,臭化シンナミル)との反応を行なったところ,S-アリル化とチオクライゼン転位反応が進行し,見かけ上SN2'型のアリル化生成物が得られた.反応の位置およびジアステレオ選択性は完全であり,SN2型生成物や他のジアステレオマーの副生は全く認められなかった.一方,軸不斉ラクタムエノラートとアリル系ハロゲン化物との反応では,通常のSN2反応が進行し,完全な位置およびジアステレオ選択性でプレニル化ならびにシンナミル化生成物を与えた.このように,軸不斉ラクタムとチオラクタムでは全く異なる位置選択性を示すことを明らかにした.さらに,SN2'型アリル化チオラクタム生成物をm-CPBAで処理すると,ラクタム体に変換可能なことも見いだし,これにより,アリル化位置異性体の高選択的分岐合成が実現できた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は炭素ー窒素軸不斉チオラクタムの高エナンチオ選択的合成と,チオラクタムの特異な反応性をを利用した不斉反応の開発を目的に検討を行なった結果,ほぼ当初の目的通りの結果を得ることができた.
すなわち,触媒的不斉分子内Buchwald-Hartwigアミノ化とLawesson試薬との反応を利用することにより,軸不斉チオラクタムを98% eeで合成した.さらに,軸不斉チオラクムより調製したエノラートのアリル系ハロゲン化物(臭化プレニル,臭化シンナミル)に対する反応性が,ラクタムエノラートと全く異なることを見いだし,これらの反応性の違いを利用することにより,アリル化位置異性体(SN2'型およびSN2型生成物)の高立体選択的分岐合成を実現した.また,本反応は光学活性炭素ー窒素軸不斉チオアミド 系化合物を用いた最初の不斉反応と位置付けられる.
これらの結果は,最近米国化学会のJ. Org. Chem.誌にアクセプトされたが,この際,3名の査読者の内2名の査読者よりtop10%論文という高い評価を得ている.以上より,本研究はおおむね順調に進展していると判断した.

今後の研究の推進方策

炭素ー窒素軸不斉化合物は新たなタイプのアトロプ異性分子として注目を集めており,現在それらの触媒的不斉合成や不斉反応への応用等が活発に研究されている.一方,これまで報告されている炭素ー窒素軸不斉化合物の多くがアミド型化合物であり,炭素ー窒素軸不斉チオアミド については,速度論的光学分割を用いる合成法が一例知られているのみである.また,軸不斉チオアミド を用いる不斉反応に関しても,申請者が報告した上記チオラクタムエノラートを用いる反応が唯一の例である.
そこで,他の軸不斉チオアミド系化合物として,キナゾリン-4-チオンやチオアニリドを高エナンチオ選択的に合成し,不斉エノラート化学や不斉転写型反応へ適用することにより,その特異な反応性を明らかにする.また,軸不斉チオアミド系化合物の構造論的研究もほとんど行われていないことから,軸不斉チオラクタム,キナゾリンチオン,チオアニリドを用いて,アミド系化合物とは異なる構造特性を明らかにする.

次年度使用額が生じた理由

研究が比較的順調に進展したこともあり,当初想定していた試薬,溶媒,消耗品に関連する諸費用が削減されたため.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Regio- and Stereoselective α-Allylation with Enolates Prepared from N-C Axially Chiral Thiolactam and Lactam2024

    • 著者名/発表者名
      Sakagami Tatsunori、Matsui Ryosuke、Aoyama Shohei、Niijima Erina、Richards Gary J.、Hori Akiko、Kitagawa Osamu
    • 雑誌名

      The Journal of Organic Chemistry

      巻: 89 ページ: 7312-7319

    • DOI

      10.1021/acs.joc.4c00460

    • 査読あり
  • [学会発表] 炭素ー窒素軸不斉ラクタムおよびチオラクタムエノラートを用いるプレニル化位置異性体の高立体選択的分岐合成2023

    • 著者名/発表者名
      坂上達紀, 松井綾佑, 青山昌平, 北川 理
    • 学会等名
      第 85回有機合成化学協会関東支部シンポジウム
  • [学会発表] 炭素ー窒素軸不斉ラクタムおよびチオラクタムを用いるジアステレオ選択的αーアルキル化反応2023

    • 著者名/発表者名
      坂上達紀, 松井綾佑, 北川 理
    • 学会等名
      第67回日本薬学会関東支部大会

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公開日: 2024-12-25  

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