研究実績の概要 |
本年度はまず,既に合成に成功しているPS3S3型配位子 P(C6H4-2-SCMe2SPh]3 (1) を有する二核遷移金属錯体の合成について検討を行った。 PS3S3型配位子 (1) と2当量の[Pd(dba)2], [Pd(PPh3)4]との反応によるパラジウム二核錯体の合成を検討したところ,いずれの場合にも,反応混合物の31P NMRスペクトルにおいて20 ppm付近に複数のピークが観測され,複数のパラジウム錯体の生成が示唆された。しかし,生成した錯体の単離・構造決定には至らなかった。また,[RhCl(cod)]2, [IrCl(cod)]2との反応も検討したが,これらの場合にも,反応混合物の31P NMRスペクトルにおいて,ロジウム錯体との反応では60 ppm付近に,イリジウム錯体の反応では85~90 ppm付近に対応する錯体に由来すると考えられるピークが複数観測された。そして,これらの場合にも生成した化合物の単離・構造決定には至らなかった。 さらに,SiS3S3型配位子前駆体 HSi(C6H4-2-SCMe2SPh]3 (2) と金属錯体試薬,[AuCl(SMe2)], [RhCl(cod)]2, [IrCl(cod)]2, [Pd(dba)2]との反応による二核遷移金属錯体の合成について検討を行ったが,いずれの場合にも,混合物の1H NMRスペクトルにおいて,遷移金属ー水素結合を有する錯体が複数生成していることが示唆された。しかし,生成した化合物の単離・構造決定には至らなかった。また,SiS3S3型配位子前駆体 (2)と[Pt(PPh3)4]との反応では,少量のPt-H結合を有する錯体の生成が反応混合物の1H NMRにおいて確認されたが,その単離・構造決定には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度も引き続き,PS3S3型配位子 P(C6H4-2-SCMe2SPh)3 (1)およびSiS3S3型配位子前駆体 HSi(C6H4-2-SCMe2SPh]3 (2)と種々の金属試薬の反応による二核遷移金属錯体の合成について検討を行う。具体的には,PS3S3型配位子(1)とAgX (X = BF4, OTf, ClO4, etc), [Au(SMe2)]OTfなどとの反応やSiS3S3型配位子前駆体 (2)と[RhCl(coe)2]2, [Rh(cod)2]BF4などとの反応について検討を行う。 また,PS3P3-2Sn配位子P(C6H4-2-SCMe2SPh)n(C6H4-2-SCH2PPh2)3-n (n = 1,2)やSiS3P3-2Sn配位子前駆体HSi(C6H4-2-SCMe2SPh)n(C6H4-2-SCH2PPh2)3-n (n = 1,2) の合成についても検討を行う。これらの配位子では,チオエーテル部位よりも強い配位能を持つと考えられるホスフィン部位をより多く有するため,より安定な錯体の形成が期待できる。
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